Sさんの家は山のふもとにある。
まだ小学生だったSさんが留守番をしていると、玄関で誰かが「ごめんなせい、ごめんなせい」と呼ぶ声が聞こえる。
「呼び鈴があるのにな…」と不思議に思いながらもSさんが玄関へ向かうと、そこには蓑笠を着た小さな男がいた。
「山名のお爺さんに線香をあげに来ました。」と男は言う。
「家は山田で山名さんはお隣ですよ。それに山名のお爺さんはまだ元気ですよ。」とSさんが言うと、男は踵を返しスッと家を出ていった。
数日後、山名のお爺さんは亡くなった。
老衰による自然死だったそうだ。
お爺さんが亡くなって数日後、その男の話を祖母に教えると彼女は笑って言った。
「山のアレは律義だねえ。私が死ぬ時にも来るんかねえ。」と
山にまつわる怖い話58