怖い話、っていうのとは違うのかもしれないけど
うちの実家は周囲を山に囲まれてる街なんだけど、その中でも一等大きい山に神社があるのよ。
で、その山に祭られてるのが正しい名前はちょっと忘れたけど「ヤツなんとかビメ」っていう女神様なんだそうな。
伝説によると、その女神様はもともとそこらへん一帯の山を守護する神様だったんだと。
最初の頃はその土地に移り住んだ住民とも比較的仲良くやってたそうだ。
女神様が住民に山幸を与えて、住民はその感謝を女神様に捧げる。
その関係は良好だった、といえるらしい。
けどある時突然、山に入ってきた住民に祟りをかけるようになった。
住民が何をやっても何をしても何も聞かない聞こうとしない。
そんで住民がどうすべえ、どうすべえって悩んでたら神様の使いと称する奴が住民の前に現れたんだそうな。
その使い曰く、
「私(その女神)が所属する派閥にとって、お前達は対立派閥の血脈に連なる者である」
「先日、派閥の闘争がとうとう抑えきれぬ物となり、対立閥のお前たちに害なせと命が来た」
「けれど、縁をもってしまったお前達をこれ以上苦しめることは私にはできない」
「私はこれからこんなことを止めさせて欲しいと談判に行ってくるから、安心して欲しい」
という。
その日から、山に行っても祟りは起こらなくなったらしい。
けれど、その女神様は何年経っても何年経っても、一向に山には戻ってこない。
住民はその女神様が今も談判を続けているのだと、疲れて帰ってくるだろう女神様の為に社も立てて、ずっと今でもその女神様が帰ってくるのを待ってるのだそうな。
山にまつわる怖い話59