うちの先祖

昔だし、山奥だったこともあってその家のトイレは汲み取り式だった。
カマドウマやらでっかい蜘蛛やらが跋扈していて、カマドウマが特に苦手だった自分は催す度に憂鬱になったのを覚えてるよ。

その日も深夜、単語帳をめくっていたら急にトイレに行きたくなった。
廊下に出てトイレに向かう。残念なことに、カマドウマさんがドアの前でこちらを見つめていた。

見たことがなければわからないと思うが、この虫はシンプルな見た目に反して妙に人をぞわぞわさせる雰囲気を持っている。
飛び跳ねさせないよう静かにトイレに入ると、出るときにまたカマドウマと遭遇するという憂鬱を抱えながらようやく用を足した。

ふと、ドアに付いた磨り硝子の窓を見ると洗面所に向かって白い人影がスライド移動していく。
婆さんかな、と思って外に出たが誰も居ない。
不審な点と言えば、さっきまでドアの前に立ちはだかっていたカマドウマがころんと横になって死んでいるだけだった。

翌朝、その白い影について婆さんに聞いたら、「○○さん(婆さんの姑、ひい婆さん。故人)やなかね?」って言われた。
うちの先祖は死に神か何かか、と突っ込みたくなった。

山にまつわる怖い話60

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