こ~い、こ~い

僕が小学生の頃、沖縄にいた時の話。

僕はひどい寝不足に苦しんでいた。
なぜなら、僕が住んでいたその家は、とにかく怪奇現象の絶えない家だったからだ。
いったん眠りについたとしても、必ず夜中の1、2時ぐらいに目を覚ますしてしまう。
そして、必死になってまた眠ろうとするが、その時に妙な音が聞こえてくるのである。
ラップ音という奴だ。

だれもいないはずの台所から、食器がカチャカチャ鳴る音が聞こえたり、床を叩く様な音、何かが倒れる様な音、人の足音、人の声のような低い音。
そういうのが毎日のように続き、寝ように眠れず寝不足に苦しんでいた。

ある夜、僕はまた夜中に目が覚め、必死になってまた眠ろうとしていた。
すると遠くのほうから、男の人の声が微かに聞こえてきた。
最初はよく聞き取れなかったけれど、その声がだんだん近く、はっきりと聞こえてきたのである。

「こ・・・い、こ・・い、こ~い、こ~い」

誰かが外から呼んでいる。
僕はさすがに怖くなり、布団をめくりあげると、周りをあまり見ないようにして、急いで隣の部屋で寝ている両親の部屋に駆け込んだ。
ドアは内側から鍵がかかっていたため、泣きながらドアを叩きようやく開けてもらった。
両親はなにごかと思ったようだが、僕が青ざめた顔で、外から誰かが呼んでいると言うと事態を察したらしく、一緒の部屋で寝ることになった。

そして寝ようとすると、ドアを思いっきり叩く音。
だけどそれは、僕と一緒の部屋で寝ていた弟だった。
僕が部屋からいなくなっていることに気づき、後を追って来たらしい。

ホッとしてまた寝ようとすると、またドアのを叩く音が聞こえた。
もうこの部屋の外には誰もいないはずなのに・・・。
しかもそれは、ドアを叩くというよりは、何かがドアの前で暴れている、のたうち回っている様な感じだった。

僕はギョッとして母親の目を見つめた。
母親は口に指をあてて「しー」。
両親もその現象は気づいていたようだけど、特になにかしようとはしなかった。

しかしある朝、父親が青ざめた顔で、変な夢を見たといった。
夜中に目が覚め、金縛りにあったというのだ。
すぐ近くでお経が聞こえ、なんだか人の気配がする。
目を開き横を見ると、一人のお坊さんが自分の横に座って、お経を唱えているというのだ。
そしてそのお坊さんの後ろには、泣いている沢山の人の姿。
自分の葬式が行われていたというのだ。

大声で叫ぼうとしたり、必死になって身体を動かしているうちに、やっと目が覚めたらしい。
さすがに父親も怖かったのか、いいかげんお祓いをしようということになり、神主さんのような人にお祓いをしてもらった。

しかし、その後も怪現象は止むことはなく、その後色々な事情等から、その家を引っ越すことになった。
引っ越してからは夜に目が覚めることもなくなり、家庭内の雰囲気も明るくくなった。

今、その家は他の人が借りて住んでいる。
しばらくして、その家を借りている人からこんな話があったそうだ。
昼間、テレビを見ながらふと窓の外に目をやると、若い上半身だけの日本兵と目が合ったのだという。

どういう霊がいるのかは解らないけれど、とにかくもうあの家とは関わりたくない。

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