真下の病室

まだ修学前だったのは覚えている。
父が大事故にあった。
40日ほど意識不明で生死をさまよい植物状態になるかもって周囲の大人は覚悟してたらしい。

しかし奇跡が起きて父は意識が戻ったんだ。
幼かったのでよく覚えてないけど後から聞いたら医者曰く奇跡だったらしい。
ここまでは前置き。

それからしばらく県北部の某病院で入院する事になり、母と一緒に何度か見舞いに行った記憶がある。
チューブだらけの父は別人にも思えて酷く怯えてたらしい。
で、ある日の見舞いのときに暇だったんで病院内をブラブラ散歩してたんだ。

父が居る病室は二階か三階で階段を上がると直ぐ見える部屋。
個室だったかと思う。
私はまだ意識が朦朧としている父に語りかける母を階段のあたりで眺めていた。
そしておもむろに下の階へ降りた。

その階段は白い格子状の手摺で格子からは向こうの様子がわかる。
子供にとってはその格子をくぐったり戻ったりと格好の遊びになっていた。
丁度自分の目の高さには父がいる病室がみえる。
母も見える。
しゃがんで下の階を覗き込むと父の病室の真下の病室に…

父と母がやっぱり同じ様に同じ位置で同じ服装で居るんだ。
私は「???」
上の階と下の階を何度も交互にみても同じ様にどちらにも父と母が居る。
下の階の両親は誰だろう?と思い数歩階段を降りたが、なんとも形容し難い恐怖心が沸き起こり、もといた階の両親の元へ泣きながら戻った。

母は何を言ってるか分からないという反応で笑い飛ばしたけど…
その後は覚えてないけど子供だったこともあり、不思議とは思わず過ごしていた。
未だに謎。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 87

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