Y君

うちの父が中学の教員になったばっかりの頃の話。

今でもたまに話してくれる。
当時父は陸上部の顧問やってて、砲丸投げ選手にY君という生徒がいた。
すごく真面目な子だったが、ある日学校を休んだ。
保護者から「風邪です」と連絡が入ったので、「只の風邪か」とそこまで心配することもなく復帰を待っていた。

しかし、只の風邪だったはずが、運悪く菌が脳に入ってしまい、Y君は帰らぬ人となった。
Y君の訃報は、父や他の教師たちにとって信じられないものだった。

Y君の葬儀が終わって暫く経った。

父ら教師たちは三階の音楽室で会議をしていた。
夜8時頃だったらしい。
ふと、父が側の窓に目をやると、外から男子生徒の後頭部が見え、ひゅっと下に引っ込んだ。
父は「こんな時間に軒(壁から出てる屋根みたいなやつ…他に適切な表現が分からんorz)に登って何遊んでんだ!!」
と窓を開けて外を見たが、その窓の下に軒なんか無い。一階の地面まで、一直線だった。

その頃から、校内でY君の幽霊が出る、という噂が出始めた。
ある日の放課後、父と数人の教師が当番だかで遅くまで教務室に残ってた。
そろそろ部活終了時間になる頃、体育館で練習していたバレー部員たちが教務室に駆け込んできた。
部員たちは揃って「Yがいた!!ステージんトコに立ってた!!」と涙目になりながら訴えていた。

父たちは生徒たちの尋常じゃない様子を見て、音楽室の件や多くの目撃情報もあって「これはマズイ」と思ったが、これ以上生徒たちを怯えさせる訳にもいかないので、「んな訳ねぇだろ!!バカなこと言ってんな!!」と彼らを一括し、下校させた。
で、最後に自分たちが戸締まりを確認。
体育館の戸締まりは残ってた人全員でgtbrしながらやったらしいw
何事も無く戸締まりを終え、よし帰るか、と体育館を施錠した瞬間―――

ド ン !!!!

体育館の中からとんでもなくデカい音が響き渡った。

全員ビクゥッ!!となり慌てて中を確認したが音の原因になりそうなものは何も無い。
だが父には音の正体が分かっていた。
(あれは砲丸の音だ)
普通、砲丸投げは体育館内では行わないが、体育館内で砲丸を投げれば、あんな音になるだろう、と。
砲丸投げの選手だったY君。
「Y君、やっぱりいたんだなぁ」と父は思った。

その後もY君にまつわる噂は続いた。
父も何度か見かけたらしく、金縛りも経験した(これはY君に関係あるのか不明)

父がY君を最後に見たのは、その年度の終業式だったそうだ。
ステージの天井から飾ってある横断幕?(スローガンとか書いてあるやつ)の所にY君が座っていて、その場にいた全校生徒が目撃したらしい。

以上です。
Y君、成仏していることを祈ります。

ほんのりと怖い話60

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