長い髪の女

去年の俺の実体験話。

仕事と人間関係で疲労困憊、体調を崩して退職、一時期田舎の実家に帰っていた。

実家は、母方の親戚から譲り受けたもので、古いけどそこそこ大きくて綺麗。
父親は亡くなって母親が一人で住んでる。
ちなみに母親は真面目で勤勉、信心深く寺通い・墓参り・仏壇にお供えなど欠かしたことはなく、そして霊感はない、という霊に絶対取り付かれそうにないタイプ。

実家は台所・居間・和室×3(仏間あり)・洋間1・他の構造。
一番の問題はこの洋間で、明るく綺麗な他の部屋と違って明らかに空気がよどんでいるというか、重い。
掃除や風通しは毎日してあっても、この気配はどうしようもない感じ。
俺は実家に泊まる時はこの部屋に布団を引いて寝るんだけど…。

実家に戻った二日目の夜だったと思う。
夜、普通に明りを消して寝てると、首筋とか頬にさらさらと髪が流れる感触がして目が醒めた。
目が醒めた、というよりちょっと眠りが浅くなった感じ?

なんか邪魔くさい、と思って、無意識に手で払って寝返りをうったけど、よく考えたら(考えなくても)俺は髪は短いんで、そんな髪の感触がするわけはない。
なんとなく変だな、と思いつつ、寝返りをうち目を開けたら。

女が『にたぁ…』って笑ってた。

肩より長い髪の女の顔が、添い寝されてる感じの位置で。
『うわあああ!!』
と思って飛び起きた。(多分叫んではいない)
女は首しかなく、立ち上がった俺を床に首を起こして俺を見上げて『にたにた』笑ってた。

もう必死で明りをつけようと、手探りでスイッチを探してつけた。
それで女は消えたんで、そのまま明りをつけて朝まで寝た。

翌日の夜。
なんか気味悪いんで明りをつけたまま寝ていたら、母親が消してくれてました。
夜中にふっと目が醒めると背後から人の呼吸が聞こえる。
気の所為と思っても消えなくて、それどころか位置が動いている。

結局また
『うわぁぁぁ!』
と思って飛び起きて明りをつけた。
時計は2時前後。明りをつけたままその日も朝まで寝た。

その後
母親に言うと余計な心配をかける(ついに頭まできたかとか)ので、とにかく明りは消さないでくれ、とお願いして数珠とか、盛り塩とか(言わなくても充分あやしいよな…)して寝る日々が続いた。
(何故部屋を変えなかったのかと、今なら思う)

それでも、夜中の2時頃には不思議と目が醒めてしまい物音とか気配が気になって仕方なくなった。
(気にしすぎか本当かよく判断がつかないのでここら辺は割愛)

最終的な解決法は、その手の話に強い知り合いの
『人の多いところに行ってそれ(霊?)をうつして来い』
という、ちょっと他の人には申し訳ない方法だった。
2日位連続で出歩きスーパー内(田舎だから選択肢が少ないw)とかを歩き回った。
ある日ふと、すごく楽になって、その日から朝まで普通に寝れるようになった。

後日談。
俺には直接言わなかったけど、母親はやっぱり精神的におかしくなったんじゃないかと、心配していたそうだ。

ほんのりと怖い話66

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