向こう岸にある木の後ろ

昔、山に住んでる親戚のオジサンに舞茸取りに連れて行ってもらった。
薮抜けたり川越えたり一時間くらい山の中を歩いてなんとか天然舞茸をGETした帰り、アレに出会った。
行きの時にも通った何てことない普通の川、その向こう岸にある木の後ろに。

顔の半分だけ出して、じっとこっちを見つめてる。
オジサンも気づいてたみたいで小さい声で「あんまり見るな」とだけ言ってさっきより足早になった。
そのまま無言で歩き続け、一時間半くらいかかって山から下りた。

その日は温泉施設に寄って、オジサンの家に泊まることになった。
アレはオジサンにもよくわからないそうだった、今までにも何度か遭遇しているが特に危害を加えてくる素振りもなかったのでずっと無視しているらしい。
付いてくると怖いので念の為に、帰り道を変えたり温泉施設で匂い消したりとかしてるらしい。

あんなのと山の中独りで遭遇したら発狂するわ、すげーなオジサンと思った。
オジサンの家で食べた舞茸鍋がすごく美味しくて怖かったけどもこのオジサンとならまたアレと遭遇しても大丈夫だなと、また来年も同行させてもらう約束をして家に帰った。

オジサンと会ったのはそれが最後。
翌年の春ごろにオジサンが亡くなったという報せがあった。
俺はその時スノボで骨折して入院していたので葬式等には行けなかったから噂に聞いただけだけど、どうやら熊にやられたらしかった。
その地域でたびたび熊の目撃や畑の被害はあったので不思議ではなかった。

だけど俺はもしかしたらアレがやったんじゃないかと思ってる。

山にまつわる怖い話65

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