神様の足跡

俺の住んでいた村は山の中にある。
村の外れには神社があって、境内には樹齢何百年の立派な大木がある。
この大木には神様が住んでいると言われており、この大木の葉を懐に入れておけば、まず山中での事故には遭わないと言う。

大木の神様は、大晦日になると村内の見回りに出る。
見回りの際、雪が積もるのを嫌う。雪が積もれば神様の足跡が残るからだ。
神様は足跡を人に見られるのを何より嫌う。

大晦日の夜、俺がまだ赤ちゃんだった頃、父親がうっかり神様の足跡(その時は神様の足跡だとは思わなかった)を見てしまった。
新年を迎えた元旦の朝にはもう足跡は無かった。
父親は不思議に思いつつも、家族と一緒に初詣に行った。

神社では初詣の際、参拝者に甘酒が振る舞われるのだが、何かの手違いか父親の甘酒には例の大木の木の実や葉っぱが入っており、物凄くまずかった(舌が痺れたらしい)と言う。
この時、初めて父親は「あの足跡は神様の足跡で、俺はそれを見た罰を受けたのか!」と、コップに入った水で舌を冷やしつつ思い立ったのだと言う。

父親曰く、例の足跡は人間のにしては大きく、更にその足跡に付き従うかのように、何かの動物の足跡もあったのだと。
足跡は例の大木のある神社からやって来て、神社に帰ってくかのように残っていたとの事。

山にまつわる怖い話66

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