一駅歩く

東京に住んでいた時の話。
我が家の最寄り駅の一つ前の駅が、終電の際の終着駅でした。

ある日、平日ダイヤと休日ダイヤをうっかり見間違え、自分の最寄り駅へ行く電車がなくなってしまいました。
仕方がないので初めて一駅歩くことに。時間は深夜1時頃。
怖いなと思っていたのですが、私の他にも同じ境遇の人が数人いたらしく、同じ方向に歩く人がぱらぱらいたため、そんな気持ちも無くなりました。

段々分かれ道に差し掛かるにつれ、一人減り、二人減り、とうとう私と、少し先を歩く女の人だけになりました。OLっぽい人でした。
女の人とは常にある一定の距離が保たれていたのですが、最寄り駅が見えてきた!という時になって、徐々にその距離が縮まってきました。

そしてとうとう追い越しそうになった時、
『この女の人が前を歩いてくれていたから、夜道も怖くなかった。本当に心強かった。
 どんな人だろう?顔が見てみたいな』
と思い、すれ違い様後ろを振り返った瞬間、女の人の姿が消えてしまいました。
脇道も家もない一本道で、姿が隠せそうな場所はどこにもないのに。

『あー、幽霊だったのかなー』とぼんやり思いつつ、駅にたどり着くまでのおよそ1時間、先導してくれた事に感謝しました。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 95

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