去年の夏に小学生から付き合いのある友人の家に飲みに行っていた時の事。
霊感がない俺は本やネットで怖い話を読むのが好きで、その友人と二人で飲んでいる最中に心霊系の話になった。
俺がこんな話もあった、あんな話も聞いたことある、と話し、友人も、それは聞いたことあるわ(笑)などと笑い半分、怖がり半分で話していて、俺が「こんな不思議な体験したわ~」と話すと友人が突然、実は…と切り出した。
その内容というのも、友人は弱いながらも見える体質であり、そこそこの体験をしているとの事だった。
俺の家族を含め、そういう人がいない事に加えて、長い付き合いだった友人の突然のカミングアウト。
元々、怖い話が好きなのに加えて、生の体験談が聞けるとあって話は盛り上がり、友人と話していると二十四時を過ぎていた。
さすが友人宅の実家なので泊まる事に気が引けた俺は歩いて自宅に帰る事にした。
歩いて帰る事の出来る距離ではあったが、片道30分以上な上、時間帯は深夜。
車で送るよ、と友人の家族の強い申し出があったが、その日は平日だったので丁重に断り歩いて帰る事にした。
それで、友人は友人は「せめて、見送りくらいはする」と近くまで送ってくれる事になった。
帰り道のほとんどは街灯もない田舎道。
さっきまで怖い話をしていた事もあって、帰り道のルートが三つあるが、その中でヤバイと感じる場所を三番目まで挙げて交互に挙げていくか、という話になった。
まず、言いだしっぺである俺が三番目だと感じた「国道沿いの病院」と言うと「え…?」みたいな顔をする友人。
友人も全く同じ場所を考えていたらしい…
まぁまぁ…次々!と友人に急かせて友人が答えた二番目にヤバイ場所は「俺の家の近くの工場」
今度は俺が「え…?」という反応をしてしまった。
実は、その工場の目の前で数年前に交通事故で亡くなった人がいる。
加えて、その場所は小さいころから何処か嫌な感じがしていたので、俺も二番目にヤバイと思っていた場所だった。
二人して絶句しながら、最後はお互い同時に場所を挙げることに予想を裏切らず、二人が挙げたのは同じ場所。
「友人宅の近くにある、林がトンネル状になった道路」だった。
当然、打ち合わせたわけでも、三か所が話題に上がったわけでもないので、二人で、ヤベーよ、コエーよとガクブル。
しかし、酔いが残っていて何を考えていたのか、一番ヤバイと感じた場所に行ってみるかという話に。
目的地に向かいながら、俺も霊能力があるんじゃね?と思い、目的地を頭の中で思い浮かべて霊能力者のまねごとをし始めた。(自分に霊能力があるかどうか確かめる方法が有名ですが、今思えば多分あれから連想したんだと思います)
それで思い浮かんだ映像は、自分視点ではなく第三者の視点。
友人と俺はトンネルの中間地点、道路の上に二人並んでおり、五m離れた林の中から友人と俺を見ていた。
しかも2mほどの高さから見下ろし、狼のように自分たちの右側から飛びかかり…そこで映像は終わり。
終わった瞬間、俺の右半身だけ鳥肌が半端ない事になっていた。
友人にそれを告げると、怖いと言いつつ目的地までの足は緩まず、俺も半ばやけになって友人について行った。
目的地に着くと、深夜、しかも街灯がまともについていない事もあって、不気味な雰囲気。
しかし、林のトンネル入口から二人して逃げ腰になりつつ覗いてみてもなにもいない。
「何もいないよな…?」と友人
それから30秒ほど眺めても何も見えない。
仕方ないから、さっきのもう一回やるか、と思い目の前の光景を浮かべようとした途端、友人の「逃げる」合図である肩たたき。
二人でそこから猛ダッシュ。
ちょっと離れたところで、友人に聞くと「何か、闇よりも黒い何かが『右側』にいて、林の中に入って行った」と。
そこからは、予想外の体験にビビりながらも友人と別れ、俺は自宅に徒歩で何事もなく無事帰宅。
その数カ月後、母親にこの事を話してみると物凄く驚かれた。
ハイ、二番目の工場前どころか、三か所全部で人が亡くなっていました。
三番目の国道沿いの病院では、長い直線の後きついカーブがあるので事故が多い。
一番目の林のすぐ裏に結構大きいため池があり、そこでお婆さんが溺れて亡くなったらしい。
当然、この二つの事を俺と友人は全く知らず、何で人が亡くなってるのに、工場が二番目にヤバく感じたんだろうと二人で首をひねってました。
見たのは友人だけで俺は何も見てないが、それを差し引いても不気味な合致が多い体験だったように思う。
ほんのりと怖い話77