雪深い山奥にある施設

雪深い山奥にある、ちょい特殊な施設で、まだ日が昇らない真っ暗な早朝から働いてるんだけど、パートさんと二人で仕事してたら突然「低い男の声がしなかった?」と聞かれた。

自分は何も聞こえなかったんだけど、この施設は周りが大墓地と誰も謂れを知らない謎の神社、廃墟となったホテル数件、大きな寺に囲まれた、曰く付きの場所にあるからパートさんの言葉をひどく不気味に感じた。

ある場所に行くと必ず携帯の電源が落ちたり、誰もいない施設の廊下に車椅子の音だけ響いたりと謎の現象は、よく起きる場所ではある。

確かに特殊な施設で、叫び声を上げる人たちもいるんだがそれなら自分にも聞こえる筈。

とりあえず、仕事はたくさんあるのでその事は忘れて働き休憩時間になったんだが、その時、今度はハッキリと低い男の声がした。
しかしパートさんは何も聞こえなかったと言う。
吹雪や風の音を聞き違えたのかと気になって外に出てみた。

誰もいないのに、裏口には何かを引きずったような跡が積もった雪の上にずっと続いていた。
いつもならドアノブに降り積もっている筈の雪が払われ裏口の前は雪が乱れていた。
跡を追ってみたら、何もない所でふっつりと途切れ、ただひたすら静かに雪だけが降り続いてた。

パートさんには言えなかったよ。

ほんのりと怖い話81

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