台風以降

友人の家の話。

2年ほど前。長男(友人の兄)が家を出た直後から、窓の外に女の人が張り付くようになっていたらしい。
白目の部分が充血して真っ赤に染まった、食いしばった歯も真っ赤な女。
髪はボサボサだったけど、多分肩くらいまではあった、と友人が言っていた。
もちろん人間じゃない。外から見ても見えない上、マンションの3階の窓に張り付く時点でおかしい。(ベランダはあるけど別の場所だった)

そんなんが友人の部屋(長男の部屋をもらった)に夜に出てきて、普通に生活できない。友人はリビングに布団を敷いて寝るか、次男(弟)と同じ部屋で寝るか、私の家に泊まりに来たりしていた。
(家に泊めるにあたって、私は友人の家に『出る』ことを知った)

そんなこんなで半年くらい生活して、台風の時期がやってきた。
その年は台風が多く、たまたま大型のものが地元を通過した。
台風のあと、停電だの飛んでった瓦の修理だので、友人の無事は台風通過後に一度メールして確認したきりだった。

数日後、友人宅に遊びに来いとメールが来た。
休日に予定を合わせて、彼女の部屋には上がりたくないと思いつつお邪魔する。
すると、彼女はすごく晴れやかな顔をしていた。
台風以降、窓に張り付く女が居なくなったらしい。
もしかしたら台風で飛ばされて行ったのかもしれない。
彼女は嬉しそうに言った。

ほんのりと怖い話84

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