私は青い布に小銭をもらっている。
始まりは四年前、盆に田舎へ帰省した時から。
子供の頃よく遊んだ爺さんの山。
頂上近くには大きな岩があって、横に朽ちかけの小さな祠があって、田舎で特にやることもないので大人になってからも山に登っていた。
道なき道を登っていく途中で、木の裏から青いハンカチのような何かが出ているのが見えた。
その時は何か引っかかっているだけだろうと特に気にしていなかった。
しかし、少し登り最初にそれがあった辺りで目線を上げると、また同じように青い何かが視線の先の木の裏から見えていた。
その時はまだ怖いと言うより不思議で頭がいっぱいだった。
そんなことを繰り返していると岩についた。
横にある祠の裏には古い釜や錆びた鋏、食器なんかが転がっていて荒れていた。
昼間とはいえ霊的なものを祭っている物の前に一人はさすがに背筋が寒くなる。
とりあえず私は祠にポケットに入っていたジュースのお釣り50円を置いた。
適当に景色を眺めて休憩した後、私は山を降り始めた。
途中でふと後ろを見ると、登りと同じく青い何かが木の裏から出ていた。
さすがに不気味になった私は早足で山を降りた。
山を出る頃には既に恐怖で一杯だった。
「一人で居たくない」という気持ちで一杯だった。
家に入るとご飯のいい匂いがしたので急いで台所へ向かった。
縁側を早歩きして台所ある部屋への角にさしかかったとき、私の目に再びあの青い何かが映った。
「あっ」と反射的に後ろへ飛び退き、私はドンッ!と家に響くほど尻餅をついた。
顔を上げた時、青い何かはもう消えていて、代わりに驚いた顔で母がこちらを見ていた。
気のせいだと自分に言い聞かせ立ち上がろうとしたとき、私は足元に十円を見つけた。
それからというもの、部屋に限らず風呂やトイレ・玄関・ベッドの上みたいな
財布を出すはずの無い場所や外出先で頻繁に小銭を見つけるようになった。
ただの偶然だとは思うけど、個人的にはあの青い何かは祠の住人で、置いていった50円の御礼でもしてくれてるんじゃないかなぁと思ってる。
ほんのりと怖い話86