高校時代の話。
当時親父が猟銃を趣味でやっており、猟犬を飼っていた。
小学生の時離婚し、母親に引き取られて別居していたんだが、ちょくちょく親父の所に行き俺もキジ撃ちや猪狩りに参加していた。
猟犬を飼っているプレハブは中々立派で、簡素なドッグランも併設しそこそこ広かったんだが、親父は掃除や片付けが苦手というか全く出来ない人種だったので、小遣いを貰って掃除や糞の始末をするのが俺の役目だった。
その掃除中起った出来事。
いつもの様にプレハブ内の糞を片付けていたら、隅の壁に25~30㎝ぐらいの人形が立てかけてあった。
リカちゃん人形っぽいのをイメージして貰えばいいか。
くすんだ赤い服でみすぼらしい人形だったが、犬の玩具かと思い特に気にも留めず作業を続けた。
それでその人形をどかして掃き掃除し様とした時、こちらを向いていた人形がクルッと壁側に向き直り、そのまま横歩き?でカサカサッとすごい速さで犬が休む時に使う小さな小屋に入り込んだ。
俺は呆然とそれを見ているも頭の中はパニック状態。
少しの間動けないでいたが、ハッとしてドッグランに放していた犬達を呼んだ。
例え犬でも猟犬であり、一人よりは心強いと思ったから。
目だけはその小屋から離さず、犬に小屋を調べる様指示したが、犬達は警戒している様子はなく、??という感じで俺の横から動いてくれない。
その小屋は屋根部分が取れる仕組みだったから、勇気を出し思い切って剥いでみたところ、中には何も居なかった。
ただ、屋根を持った時に『あぴ』という人間の発音だけハッキリ聞こえた。
とにかく掃除だけ済ませ、親父が仕事から帰るのを待ち、件の人形を犬にあげたか聞いたが、そんな物は知らんと言われ、話も信じて貰えなかった。
人形ではないとしたら、小人や妖精の類だったんだろうか?
嫌な感じこそしなかったものの、とにかく怖かった。
ほんのりと怖い話90