おじの命日

俺の誕生日は母方のおじの命日だ。
そのおじは、俺が生まれる前、おじが24歳の時に大腸癌が見つかり、その時には既に手遅れだったそうで、発見から3ヶ月で死んでしまったそうだ。

だから、俺は生まれてからずっとおじの生まれ変わりだと言われ続けていた。
頭がいい人だったから頭がいいはずと学習塾を幾つも掛け持ちさせられたり、ヒジキが好物だったからとヒジキがしょっちゅう食卓に並んだ。
おまけに俺は生まれつき腸が弱く腹を壊すことも多かったから、余計におじの生まれ変わりだと、母親やその兄妹のおじおば、祖父母にも言われ続けてきた。

おかしなもので、言われ続けてると次第にそうなるもので、ヒジキは好きになったし、勉強もそこそこいい成績を上げて、そこそこの大学へ進学もした。

成人式の日、母親が恐い顔をしてこう言った。
「あと4年だからね」
確かにあと4年すればおじの死んだ歳になる。
俺はそのおじのこともあって、高校卒業以来毎年、健康診断を病院で行なっている。

「検査結果は問題無いし、大丈夫だよ」
俺は母親にそう告げた。
それならいいんだけどね…と母親は言って台所へ戻った。
その後ろ姿はなんだか寂しそうだった。

それ以来、母方のおじおば、祖父母、いとこまで俺にカウントダウンをしてきた。
あと4年、あと3年、あと2年、あと1年…
俺が大丈夫と答えると、皆寂しそうに去って行った。

そして今度の9月、俺は24歳の誕生日を迎える。
今朝方、母親が笑顔で言った。
「あと3ヶ月だね」

今、家出を考えている。

ほんのりと怖い話94

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