角の井戸

幽霊話とはちょっと違うしそんな怖くないかもしれんけど…

一時ヒキだった俺を心配して、叔父が仕事を紹介してくれた。
父方の田舎の土建関係の仕事で叔父の家に住んでも良いし、寮に入ってもいいから体一つでこいといわれて貯金も底をついていた俺はいそいそと言った。
肉体労働で大変だったけど、仕事は結構楽しかった。

ある日、叔父から「角の井戸を埋めることになったのでその仕事もお前んとこがやるだろうな」といった。
角の井戸とは、既に誰も使っておらず、蓋だけしめられている井戸で、どうも先日、親戚宅に遊びにきた子供が行方不明になり、井戸を覗きこんでいて落ちる寸前に発見され、これは危ないということになり埋めることになったらしい。

実際、俺のいるグループ(いくつかのグループにわかれている)にその仕事がきて事前調査の手伝いも俺たちがやった。
(井戸とはいっても単に土砂いれて埋めるだけ、とかじゃなく事前調査が必須)
で、その調査のため井戸の中を確認したところ、中から骨がいくつもでてきた。

水で晒されているせいか骨は全部白くてきれいで、よくテレビでみる発掘された骨のように茶色がかったりしていなかった。
頭蓋骨だけでもいくつも出てきて、現場は大騒ぎ。
すぐ警察に連絡して一時工事は中断。
しばらくして村長とか村のお偉いさんとかもやってきてなにやら話し合いが始まったので俺たちはそのまま帰った。

翌日、しばらく別の仕事かな、と思っていたら何の問題もなく作業再開。
再開どころか、調査中止でそのまま埋め立てることになった。
現地にいってみたら警察もおらず、村長さんと青年団のオッサンが数人いて、俺たちの作業見張りながら、水抜き→埋め立ての作業をやらされた。

あれ、多分「なかったこと」にされたんだろうな。
海沿いの小さな村だし、人が行方不明になったら多分大騒ぎになるだろうから。
遠方から捨てにきたのか、いや、でも、あんな村中の井戸を遠方の人が知ってるわけないよな。
じゃあ、一体「いつ」「誰が」遺体を捨てたんだろう?と今も色々考える。

ほんのりと怖い話94

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