私は小さい頃から歌が上手いという訳ではないのに評価される事が多く、音大に進学しました。
練習しない、煙草を吸う、嫌いな歌は歌わないと素行が悪かったにも関わらず、先生達の評価はとても高く期待されており、学内では嫌われていたと思います。
ある日、夜中にお風呂でシューベルトの魔王(お父さん魔王が来るよー大丈夫あれは霧だよという歌)を歌っていたところ、廊下に面した磨りガラスの窓にベッタリと両手をつけ覗き込んでいる人がいたので、さすがにうるさすぎたかな?と窓を開けて謝ろうとしたら、人はいませんでした。
ちなみに、当時住んでいたマンションは大学近くだったので防音壁、ピアノ持ち込みOKと、音に関してはかなり寛大だったと思います。
それから管理会社から苦情もこなかったので、またお風呂で歌っていたのですが、ある日魔王を歌っていたらまた窓に人が。
怖いとは思わず、コイツは魔王を歌えば来るのかな、と考察し、数日魔王を歌ったり他の歌を歌ってみたところ、やはり魔王の時だけ現れる。場所はお風呂だけ。
特に気にもせず、気が向いたら魔王を歌って、魔王の人が覗いているのを見ていました。
オチも何もないのですが、一度自称霊感有りの先輩に、「今憑いてる霊がいなければあなたなんて落ちこぼれる」と言われた事があるのですが、それは魔王の人の事だったのでしょうか?
大学を中退し、現在は実家暮らしなので、魔王の人が今もいるのかはわかりません。
ほんのりと怖い話97