不動産開発的な仕事で海外にいたことがあるんだけど、当時いた支店の近くの国でうちができるかもって案件があって、現地に調査に行ったのね。
俺はその国の言葉は分からないから通訳雇って、日本人の同僚交えて3人で現地入りした。
その場所は平野と農家だけのど田舎で、日帰り調査は難しいからってことで一泊することになってて、現地の業者さんの家に泊めてもらった。
晩飯の時に通訳介しながら話してたら、その家のお爺さんが「この辺りは黒い人が出るんだ」って言い出すの。
もうアメリカの会社とかも調査に来てるんだって思ったんだけど、よく話聞いてみると黒人てことじゃなくて、文字通り色が黒い人だって言うんだよ。
まあ訳しながらの会話だから本当はもうちょっとちゃんとした説明だったのかもしれないけど、爺さんはともかく黒い人が出ると。
その時は、そんな感じの伝承があるんだなーくらいにしか思わなかったんだ。
俺は寝る前に風呂浸からないと落ち着かないので、家の人がみんなシャワーとか浴びた後、夜中の1時くらいにバスタブにお湯張らせてもらって風呂に入ってたのね。
風呂場の隣が洗濯とかできる広い洗面所みたいな感じで、仕切りに曇りガラスの引き戸が付いてたんだけど、ふと見たら、曇りガラスの向こうに人が動いてるのが見えたのね。
バスタブからチラッと見たらそいつの頭が黒く見えたから、さては同僚も風呂に入りに来たなと思って、「すぐ出るからちょっと待ってくれ」って言ったんだけど返事はなくて、そのまま突っ立ってるのよ。
「もう出るからタオル取ってくれないかな」って言っても無視。
仕方ないから自分で引き戸開けてタオル取りに出たんだけど、誰もいない。
ん?って思って、廊下に繋がるドアを見たらドアノブくらいの高さに後頭部が見えたから、ははあ、同僚が脅かすつもりだなって思って、「ふざけてるなよ」ってドア引いたんだ。
そしたら、廊下に子供が立ってるの。真っ黒な。
黒人の人の肌とかの黒じゃなくて、タールとかの完全な黒色。
廊下真っ暗だから顔は分からないけど、まあ多分黒だったから見えないわな。
思わず「おおう!」って声上げて腰抜かしたら、家の人が電気つけてやって来て、その瞬間もうその子供はいなかった。
でも上手く状況説明できないから、まあなんかうやむやになったんだけど。
次の日、気になって通訳介して爺さんに「黒い人って何?」って聞いたんだけど、この集落がここにできる前からこの辺りに黒い人が出て人襲っていて、坊さんが来て説教したらそれからは出るだけになったんだよ、みたいな話しか聞けなかった。
でも爺さん以外の家の人はそんな話全然知らない風で、いまいち要領を得なくて、今でも何だかよく分からん。
今の所、唯一の不可思議体験。
ほんのりと怖い話99