Jくん

小学生のころに、両親の都合で夏休みに祖父の家に預けられていた。
そこで過ごしているうちに、同じ年の何人かの子どもと友達になった。
そのなかにJくんという子がいたんだが、この子はちょっとした霊感と超能力があって周りから一目置かれていた。

今ならかなり驚くことだと思うが、当時はすげーってそれだけで、Jくんがくじを当てて俺らがオオーってはしゃぐと、Jくんも得意そうだった。
その夏はさんざん遊んでみんなと仲良くなったけど、俺は違う県の家に帰ってしまったので、しばらくは手紙や電話をしていたがやがて交流は途絶えてしまった。

それから何年かたって高校生になって、正月に祖父の家に行った時、あのとき遊んだ子の一人Kと偶然に会った。
あの時の不思議な体験のまじった思い出はすごく覚えてたから嬉しくて(俺の妄想だったのかとも思っていた)、みんなは元気なのか、Jくんは相変わらずなのか聞いてみた。

Jくんはあれから聞いたこともない怪しい宗教にはまった親戚と両親に連れられて、どこかへ行ってしまっていた。
なんでもJくんは、その教祖に特別な力をうんたらかんたらで、ようは怪しい宗教に利用されてしまったらしい。

「J、本当は自分に超能力も特別な力もない、遠くに逃げたいって言ってた」
Kは話しながら泣いていた。
本当に超能力がなかったのかKに尋ねてみたが、「あれは多分本物だった」と言った。
俺もJくんは本物だったと思ってるし、みんなで笑って騒いでいるだけだった超能力だったのに、Jくんはあれからきっと超能力を憎んだのだろうと思って悲しかった。

Jくんは今どうしているのだろうか。
テレビやネットで怪しい宗教の実態とかをやっているのをみると怖くて悲しくなる。

ほんのりと怖い話114

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