なんか昨日怖い、と言っていい体験をした。
「怖いと言ってもいい」というのは、怖かったといえば怖かったけど、一点解らない点があり、そっちが上回っているから。
原因は夢遊病か統失でも構わないんだけど、どうしてもそれが解らない。
昨日、未明に目が覚めて、眠かったけど出社しないといけないので、目を覚まそうとベランダに出た。
うちのベランダは、隣のマンションのベランダとちょっと高さが違うが隣り合っている。
その隣のベランダの隅っこに、運動会なんかで使う赤旗がはためいてた。
何気に視線を向けると、向うのベランダが腰高分高いせいで旗の根元に目がいった。
脚だけが旗の横に立っていた。
声にならない悲鳴が出て、逃げようと思ったが、
その時「一部分だけはっきり見えている霊は、不明瞭な霊なんかよりもずっと危ない」という、謎のトリビアが頭に浮かんだ。
このままにしておくのは不味いと思い、なぜか知らないが(多分元凶だと思ったからだと思われる)旗を捨てようとした。
でもビニールテープてぐるぐるに固定されていて、うまく旗を抜けない。
仕方ないので鋏を取ろうと一度部屋に戻り、ベランダの方を向き直ると、そこにおっさんが立っていた。
時空のおっさんを汚くしたような黒服のおっさん。無論禿げてる。
ガラス戸は開いている。おっさんは部屋を覗き込み、今にも部屋に入りそう。
霊かどうかというよりそっちが怖かったので、慌ててガラス戸とおっさんの間に割り込んだ。
おっさんは身体越しに物色しながら、職質するような口調と表情で言った。
「びにーるてーぷ」
!?もしかして隣に部屋の住人か?一瞬そう思ったが、部屋に戻ってものの数秒も立ってない。
おっさんは勝ち誇ったようないやらしい笑みを浮かべて言った。
「盗ってったろ?」
「盗ってってない!!!」
はっと気づいて、ピシャーンと思いっきりガラス戸を閉めたら、おっさんは消えた。
改めて部屋中を探したが居ない。
少し後に勇気を出してベランダに出てみたが、おっさんも旗も(脚も)消えていた。
以上が昨日未明に経験した内容。
解らない点、というのは「脚」のことではない。
またおっさんの目的は相対したからハッキリ解る。
おっさんは「部屋に入りこむ事」が目的だった。
また「脚」は、そのための道具だったんだと確信している。
解らない点は、なぜ「旗」ではなく「びにーるてーぷ」なんだということ。
もし「びにーるてーぷ」をとってったら、どうなっていたんだろうか。
ほんのりと怖い話115