ハタチくらいの女の子

とあるメーカーの下請け会社で、トイレとかユニットバスとかの修理をしている。
お盆の終わり頃、とある家のトイレを修理するために訪問した。
すぐに修理は出来そうで安心して、トイレドアを開けたまま作業してた。
すると後ろから「裏口も見てください」と声をかけられた。

年配の夫婦だけかと思っていたが、ハタチくらいの女の子がカーキ色のカッパを着てずぶ濡れで立っていた。
しかも片手には食べかけたおにぎり。

「あ、はい。裏口…ッスか?」
娘さんかと思い「雨降ってきたんですね」と言うと、女の子はコク、と頷き2階に上がって行った。
修理が終わり奥さんに「治りました。あの裏口も見てって娘さんに聞きましたけど」と言ったら、奥さんに「娘?…」と聞き返された。

「はい、カッパ着ておにぎり…」と言いかけてふと居間の横の和室を見ると、仏壇横に女の子の遺影がかかっていた。
仏壇には、おにぎりと卵焼きが置かれていた。
結局奥さんと裏口を開けて確認すると、花壇の辺りにブチの猫が倒れていた。
奥さんが旦那さんにその話をすると、「すみません、お盆ですから」とだけ言われた。
昨日数年ぶりにその家に行くと(点検)ブチはその家で飼われていた。

ほんのりと怖い話120

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