お茶漬け専門店

ほんとにほんのりなんだけど。

俺はお茶漬け専門店なんてニッチなお店で働いてる。ホール希望だったけど夜勤に回された。
専門店のお茶漬け全てに言える事だと思うけど、お茶漬けの米ってカビをつける作業がある。

夜中に室温の管理しながらダメなカビが発生してないかを監視するっていう、ちょっと変な仕事内容。
ガラスのフタを覗いて、ダメなカビがあったらそのタライの米は全部捨てる。
ちゃんと発酵してるものは、カビを綺麗な水で洗い流して店に出す。
この工程のおかげで1杯2000円でも売れる。
サラサラっと胃に流し込んでしまえちゃういい米になる。

洗い流す工程の時に異変に気付いた。
エプロンの結び目を解かれたり頭のタオルを落とされたりするんだ。
それが何日も続くもんで大将(社長)に相談した。

「そりゃ狐やろ この辺は昔は山やったからな 狐くらいおるわな」
「えー?でも音もしませんでしたし」
「生きとるもんじゃないからな、うまくやれ。台所におあげさん置いといてやるわ」
「えぇ…それだけ…?」
「騙された思うて1週間頑張ってみ。あんまり気になるならホール任せる。ほんまはホールは女がええけどな」

次の日からパタリといたずらが無くなった。
でもおあげさんが減ってる様子も無く、もったいないので毎日味噌汁に入れて食べてる。

ほんのりと怖い話122

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