身内のいない末期がんの患者

あと一つ個人的に怖かったのが、身内のいない末期がんの患者。
Aはオッサンで独身で身内が誰もおらず、末期がんの患者にありがちな、態度の硬化と看護師・医師への八つ当たりが酷くなり、
Aさんは二言目には「俺が死ねばいいと思ってるんだろ!」と怒鳴りつけるようになっていった。

ある日、彼女が夜勤の見回りをしてNSに帰ってきた時、突然、NS近くの部屋(緊急度の高い患者が入る部屋)の方から、「俺が死ねばいいと思ってるんだろ!」と怒鳴る声が聞こえた。
新入りが何かやらかしてAさんを怒らせたのか、と思って部屋に足をいれた瞬間、その日の午前中にAさんが亡くなっていたことに気付いた。

部屋の中はその日は誰もいないはずなのに、誰か(何か?)がいる気配がした。
そして今度は「俺が死んで嬉しいんだろ!!」と声が聞こえたので、「そんなことないですよ。Aさんから聞いた海外のお話とか面白かったし、もっと聞きたかったですよ」と答えると、その気配がふっと消えたらしい。

それで成仏したのかと思いきや、その後、似たような話を別の夜勤担当の看護師が言っていて、夜勤のナースたちは「Aさん、また出るかな」「さっさと成仏すればいいのにねぇ」と言われるようになったとか。

死んだ後まで、「看護師に構って欲しい」「死んで欲しくなかったといわれたい」という承認欲求を持ち続ける、50過ぎたオッサンの存在が怖かった。
つーか、案外幽霊ってその「承認欲求」から来るものだったりするんかねぇ。

ほんのりと怖い話125

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