雑巾で顔をぬぐう

私が16~18くらいの頃の話です。

その日私は、いつもと変わらずに布団に入りました。ただ、少し疲れていたのを覚えています。
すうっと眠りに入るくらいのタイミングで、少しずつ体が布団から浮いてくる感覚がありました。

あれ?と思いながらも、それほど怖いとかは感じませんでした。
どちらかというと、こんなの初めての体験だ!面白いっ!と思っていました。
布団から5センチほど浮いてるのがはっきり感じられた状態でいながら、同時に夢を見ていました。

夢の中で私は、居間にいました。
私はあぐらを組んだ状態で、床から15センチくらいをふわふわしていました。
そして次第に自分の意思で縦横無尽に移動出来たり、空中でくるりと回ったり出来るようになったりしました。
その場には私以外に母がいたのですが、母はそんな私をみて呆れているような、信じられないような、なんともいえない顔で見ていました。

そんな私は母に、楽しい!楽しい!と言っていて、どんどんテンションが上がっていました。
それと同時に動くスピードもどんどん速くなり、ビュンビュン動くようになりました。
そんな私を見て母は急にハッとした顔をして、「これはなにかついているね」というようなことを言って、洗い場からぼろぼろになった雑巾のような布巾を持ってくると、浮いてる私を捕まえて、私の顔の目の前をその布巾でぬぐうような仕草をしました。

すると私はストンと床に落ちてしまい、二度と浮けなくなってしまいました。
その時私は、浮けなくなってしまったことに不満でした。
ここまでが夢の内容です。

朝目が覚めると、別に体が浮いていた様子もなく、いつも通りでした。
しかし、あまりにも生々しい感覚があった夢だったので、母にその話をしてみました。
最初のうちは母も変な夢だねと笑って聞いていましたが、私が雑巾のような布巾で顔をぬぐうという部分を話すと、ちょっと真剣なような戸惑った顔になりました。

私が話終えると、母の出身である沖縄の小さな離島に、雑巾で顔をぬぐうというお祓いの仕方が、古い慣習としてあるのだと教えてくれました。
もちろん私はそのような慣習は全く知りませんでしたので、なぜそれが夢の中に出てきたのかわからず、大変驚きました。
おちも何もない、ただの不思議な話です

ほんのりと怖い話126

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