多摩川飲み

俺が大学生の頃の話だから、もう二十年ぐらい前の話。
当時、仲間内で多摩川の河原に酒を持ち寄って飲むのがブームになってた。

そんなある日、仲間のうちの一人が、
「なんか親戚の神主に「お前は今月運勢が悪いからこれ持っとけ」ってお守り渡された」
と、お守りを見せてくれた。

その別の日、その友人が、
「南米の友達から「アナタ今月は良くないデス。これ持っててください」ってこれ渡された」
と、陶製の鈴のようなお守りを見せてくれた。

なんや、不気味やなー、気ぃつけやーってそのときは笑って済ませたのだが、それはその次の多摩川飲み会のときに起こった。

その日の多摩川飲みのとき、その友人が「お守り全部忘れてきた」と言う。
みんな「お前やべーぞw」と笑っていたが誰も本気にしていなかった。
しかし酒も進み、終電も過ぎ、こうなったら夜明けまで飲もうとなったときだった。
灯の消えた二子玉川園駅(現・二子玉川駅)と、多摩川を挟んで隣の二子新地駅を結ぶ鉄橋の上に、電車が係留されているのだが、その真上を鳥が飛んでいるのを俺が見つけた。

「おい、こんな夜中に鳥が飛んでるぞ」と言うと、みんなが「おお、ほんとだ」と見上げた。
今思えばそんな夜中に鳥が飛んでること自体不思議だが、しばらくして気づいた。
明らかに鳥の縮尺がおかしい。電車の車両の半分ぐらいの大きさがある。でかすぎる。

最初は騒いでた仲間もそれに気づいたのか、いつの間にかしーんとしてた。
そして、その鳥は多摩川の真ん中ぐらいに来たところでふっと消えた。
一同、顔を見合わせ「なんだあれ」となったが、そこは馬鹿大学生の酔っ払い。
「よし、飲み直そう!」となってまた酒盛りを始めた。

特にオチはない。
果たしてその不可思議な鳥が友人の運勢に関係があるのか、そもそも怪奇現象なのかもわからない。
ただ言えることは、その友人は今でもピンピンしていてたまに一緒に飲む仲であるということだ。
当時の仲間とはいまだにあのときの話が話題に上る。

ほんのりと怖い話128

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