大正時代の物

大正時代の物が好きでいっとき蒐集していた。
ヤフオクで乳白色の電笠とか花瓶とかを入札しては部屋にかざったり、とうじの青年雑誌や少女雑誌を買ってはその時代に想いをはせていた。

が、とあるものを買ってから、きゅうに部屋の様子がガラリとかわった。
寝つけない夜がつづいた。寝ても悪夢のくりかえし。
誰かが死んだり押しつぶされたり、そんな夢が白黒で繰り返される。
飯もあまり喉に通らない。部屋がどんよりと暗い。
あれだけ静かに大人しかった室内犬も、やたらと騒ぎたてるようになった。

いろいろと考えてみた結果、新しく購入した大正十二年の大東京地図が怪しいように思えた。
どうもコレがきてからというものロクなことが起こってない。
気のせいかもしれないが、壁から外してさっさと処分することにした。

すると不思議なことに犬の夜泣きもおさまり、部屋の中が明るくなった。
悪夢もピタリとやんでよく眠れるようになった。
その地図の制作日は大正12年9月12日。
関東大震災が9月1日、その11日後に急いで刷られたものだと推測できる。
それ以来、昔のものを集めることは止めてしまった。

ほんのりと怖い話137

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