小さな取っ手

夢に出てきて思い出したので書かせてください。
賃貸マンションに住んでいたころの話

ある日掃除をしていて、ふと壁に小さな取っ手?(襖を開けるとこについてるみたいなやつ)があることに気がついた。
入居してから一年未満だったので、今まで見落としてたんだなぁくらいに思った。
しばらく白い壁を眺めていると、壁にほんの少しだけ隙間があるように感じた。
好奇心から、俺は取っ手を横にスライドさせてみた。
すると、全く知らないもう一つの部屋が出てきた。
埃っぽかったが、定期的に管理されてる感じ。窓もついていて、日当たりも良かった。
部屋の真ん中にはピアノが3台置いてあった。

一台は俺でも知っている超高級グランドピアノで、後は普通のグランドピアノとアップスタンドだった。
三人が同時に弾けるように三角形になって置かれていた。
隣はリビングになっていて、重厚なソファが置いてあった。
もうこの時点で、ここに住んでいた?住んでいる?人間はお金持ちなんだろうなぁと想像した。
この部屋にもピアノというか、キーボードが二、三台おいてあった。
そしてその隣の部屋は、子供部屋らしかった。

学習机が2つ並んで置いてあり、それぞれの棚には学校で使っているのだろう教科書やノートが入っていた。
小学校名も名前も書かれていて(隣の市の私立小学校だった)、持ち主が同じ学校に通う姉妹であることが想像できた。

何かの手違いでマンションの隣の部屋と行き来出来るんだ、と思ったが、その部屋には玄関がなかった。
なので、独立してその部屋だけで暮らすのは不可能だった。トイレや風呂もない。
どちらかと言うと、元々は自分が住んでいる部屋にくっついていたんじゃないか?と思った。
でも、不動産屋もそんな話してなかったし、実際に俺はその物件の間取りも何度もネットで確認していた。こんな別部屋があるなんてもちろん載っていなかった。

ソファテーブルの下に何冊か雑誌が置いてあったので何気なく読むと、何だか古臭い。
発行日を確かめると、91年になっていた。
そして姉妹の学習机に置いてあるカレンダーをよく見ると、1991年の3月だった。
俺は急に怖くなり、自分の部屋に戻った。
壁も元に戻して、すぐに不動産屋に連絡した。

隣の部屋に壁から侵入出来る、住人は家具家財を置いていなくなっている。
担当者に伝えたが、そんなことはありえないの一点張りだった。
気味が悪かったので、その部屋はその場で解約を申し出た。
近くの実家でしばらく過ごし、逃げるように引っ越しをした。
今は戸建てに住んでいる。もう賃貸には住みたくない。

ほんのりと怖い話140

シェアする