綺麗なネズミ

小学生の頃、田舎のちょっとした山に建てられた古いアパートに住んでた。
昔は炭鉱で栄えてたのもあってか周りにも似たようなアパートがたくさんあるんだけど、やっぱり山にあるせいか住んでる人が疎らなんだわ。
んで、あるアパートの一階のベランダにネズミが一匹死んでた。

ネズミの周りにはBB弾が大量に散らばってて、ネズミを殺したのかはたまた死んだネズミを的にしたのか分からなかった。
なんか知らないけど、そのネズミの死骸がすごい綺麗だから大事にしなきゃ、って思った。
クリスマスのプレゼントみたいにその時はきらきらして見えた。
だから毎日そこら辺に咲いてた花を添えたり、ネズミが寒くないように草を千切って周りに置いてやったり、色々してた。

ネズミの身体が日に日に腐っていって皮膚から肉がちらりと見えるようになっても、蛆虫がチラホラ湧いても、隠す物が無くなってでろりと顔を見せる色が悪くなった細い腸も、肉も無くなって来て所々骨が見えてきても、ずっと綺麗に見えてたんだ。

ところがある日見に行くと死骸が無くなってた。
ネズミの死骸だけがパッと消えてた。
焦って半泣き状態で探し回ったけど何処にも見つからなくて落ち込んで帰った。

でもその後に見たモグラや鹿、猫とかの死骸を見ても何とも思わなかった。
この前、学校の実習でマウスを解剖したんだが、そのマウスも綺麗には思えなかった。
どうしてあの時はあんなに綺麗に見えたんだろうな

ほんのりと怖い話143

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