三十年くらい前のこと
とある坊さんの家に食事に招かれた。
居間でごちそうになっていると、となりの部屋にその坊さんが信仰しているのか、彩色はされてないがかなり大きめの孔雀明王の木製の仏像があった。
翼をひろげた孔雀に乗ってるから孔雀明王かな?と思ったぐらいで、詳しくはないから正確にはそれかどうかは分からない。
ただ飯を食いながら眺めてるあいだずっと、木製の孔雀の翼に重なるように半透明のもう一対の翼が出てきて、ゆっくりと羽ばたきを繰り返しているのが見えていた。
辞去したあとに同行者にそれとなく話をしたら、何言ってんだこいつ?って顔をされた。
それから何年かしてその坊さんが所属している寺の関係者に会う機会があり、そういえばこんなことがあったと話をしたら、その坊さんは複数の信者の女性と関係を持ち金を引っ張ったりしてなんやかんやとトラブルを起こしているとのこと。
孔雀明王もそんな家に居たくないから飛んで逃げたかったんじゃないの?とさらっと言われた
そんなもの俺なんかに見せられてもな、と思った。
ほんのりと怖い話143