宝くじというかナンバーズ4の話。
昔4ヶ月ほど地方の拘置所にいたことがある。
8人部屋で、基本的に裁判中の日々を過ごしているだけなので懲役はなく、日中やる事は何もないので、静かにおしゃべりしたり将棋をしたりノートに何か書いたりして過ごしていた。
同じ境遇なので皆仲良くなり、だんだんと普通なら他人に話さないような秘密の事も話すようになったりしてた(だいたいはまだバレてない余罪の話など)。
で、その8人の中に窃盗で逮捕されたおじさんがいた。
名前はもう忘れたが、おれがその棒に入った時から居て、多県にまたがった窃盗の件数が非常に多いのと多額窃盗が数件あり、再逮捕を繰り返していて長期間拘置所にいることは確実な感じだった。
住所不定のホームレスみたいな人で、少年刑務所に入ったこともあるらしい社会に入り込めてないような人だったが、性格はおっとりと穏やかでおれとよく将棋を指していた。
おれの裁判がすすみ判決の日が近づいてきたある日、「君は執行猶予になるだろうからもうすぐお別れだね」と話しかけてきた。
「僕は数字が強いから、君が外にでたらこの数字の並びのナンバーズ4を4回買って欲しい。かならず4回以内に当たるから、当たったらわるいけどその金額を僕に差し入れてほしい」と言ってきた。
こいつ何言ってんだと思ったら、その人のノートを見せてきつぁ。そこには数字がびっしりと書き込まれていて、それを見せながら「君の判決の月の、僕の強い数字がこの4つだから必ず買ってくれ」としつこい。
「君のぶんもあるから」と言われて、おれの数字も教えてもらった。
それは必ずおじさんのが当たった後に4回つづけて買えと言われた。
おれは話半分に、自分のノートにその数字をメモしておいた。
その数字を割り出すための計算方法も教えてくれた(おじさんは、「かずだま」とよんでいた)。
で、おれは執行猶予が確定して拘置所を出て、ご想像のとおり、ナンバーズ4でストレートがどちらも当たった。
200万くらいになった。
本当にびっくりして、すぐにおじさんに差し入れに行ったら、なぜか面会も差し入れも出来なかった。
おじさんが住所不定だったのが関係してるのかもしれないけど、理由はいまだにわからない。
その計算方法でいまも毎週金曜日のナンバーズ4買ってる。
半年に一回くらい、しかもボックスがほとんどしか当たらなくなってきたが、おこづかい稼ぎのつもりでやめられてない。
9.11の頃の話でした。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 112