減っていく坊さん

20年ほど前の実話です。

私の祖父が救急車で運ばれました。
もはや老衰と呼ばれる状態で、入院したらそこで死を迎えるのは家族全員がわかっていました。

祖父は救急車で運ばれ入院したその日の夜に意識を取り戻しました。
祖父は私たちに、
「坊さんが10人並んでいてそれを一人ずつ撃ち殺していくんだが、一人しか殺せなかった。」
と話しました。
どうやらそういう夢を見たようです。

その後祖父は意識を取り戻したり、昏睡状態に陥ったりを繰り返しました。
私たち家族は交代で祖父を見に行っていました。
そして入院してから1週間が過ぎました。
私が祖父の様子を見ていた時のことです。
祖父が目を開け口をもごもごさせ何か言っています。

私が耳を傾けると、
「坊さんが3人並んでいてそれを一人ずつ撃ち殺していくんだが、一人しか殺せなかった。」
と繰り返し言っていました。
そのときは、坊さんの数が減っていることよりも、変な夢を見るなあ、くらいに考えていました。

その二日後医師から、祖父の病状は峠を越えたという旨を伝えられました。
しかし、その夜祖父は亡くなりました。
祖父は恐らく最後の坊さんを撃ち殺したのだと思います。
祖父が自分の死期を感じ取っていたのか、それともお迎えが来る予兆だったのかはわかりません。

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