ベランダ

友達が経験した話です。

彼はほとんど全くと言って良いほど霊感が無いらしいのですが、大学へ入って一人暮らしをしてから、いきなり金縛りを頻繁にするようになったそうです。
それだけでなく、間違い電話が異常に多い。
おばあさんの声で留守電が何回も入っていたり、ある時には「親父が死にました」という間違い留守電が入っていたりして焦ったそうです。

ある日、ベッドでうとうとしてた時、ベランダを誰かが走るのを見た友達は、とっさに「おい、コラ!!」と叫びました。
するとその声にむかついたのか、男がベランダから部屋に入ってきました。

最初そいつ一人だと思って強気でいたのですが、ベランダに居たのは一人ではなかったのです。
どんどん入ってきて、最終的に五,六人にベッドの周りを囲まれました。
そして彼は、恐くて動けないのか体が動かなくなりました。
動かない体で彼は「ごめんなさいごめんなさい」とくり返しました。
すると、そいつらは部屋を出ていったそうです。

彼は恐る恐るベランダに出てみました。
彼の家は五階なのですが、隣のベランダとの境には非常時脱出用の壁があるので、それを破らない限り、ベランダ間の行き来は不可能なのです。
そして、その壁は破れてはいませんでした。
彼は「ああ、夢だったんだな」と納得しました。

そして、その夢を忘れかけていた頃、彼の友達とその部屋で飲み会をしました。
ほろ酔いぐらいだったそうです。
突然彼の友達が「おい、てめえ!」と叫んで、ベランダに出ようとしました。
彼は「どうしたの?」と聞きました。
彼の友達が言うには、「いま男達がベランダを走っていきやがった」ということでした。
その時、彼は思い出しました。同じような体験をしたことを。
そして、その話は夢だと思って、誰にも話していなかったことを。

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