包帯の用意

聞いた話。創作ではない

ある人は登山が趣味で、休日は必ず山にいるという
その人の奥さんが凄く勘の鋭い人で、旦那が週末に山に行くというと、決していい顔はしないけど 「なんとなく持っていった方がいい」と思ったものを前日にリュックに忍ばせておいてくれる

ある日登った山でひどい腹痛に見舞われた時も、リュックを探ったら入れた覚えのない整腸剤が入っていて、それを服用してなんとか日没前に山を降りることが出来たという

急な雨に祟られれば雨具が入ってるし、ガスバーナーを忘れれば菓子パンが入ってるという具合で、そのうち、その人は奥さんの勘を信頼して、そのアドバイスに逆らわなくなっていた

ある日、その人が日曜に山に行こうと思ってリュックに必要な道具を揃えていると、とっくに寝ていたはずの奥さんが起き出して来た。

目も開いてないのに幽霊のようにフラフラ来るので、ちょっと不気味に思って「……何してんの?」と尋ねたら、奥さんの両手には大量のガーゼと包帯が

「なんか今突然、持っていった方がいいと思ったから」と言って、奥さんは登山リュックのポケットにこの家のどこにこんな量のガーゼと包帯があったとかと思うほどの量をぎゅうぎゅう詰めにしていく

その姿がまるで夢遊病患者のようで、なんとなく、今の奥さんは普通じゃないんだと思ったそうだ

そのうち、ポケットにガーゼと包帯を詰め終わると、リュックはパンパンに変形していたという

「こんな量のガーゼと包帯が必要になるなんて、俺は明日どんな大事故に巻き込まれるんだ……?」と思ったその人は、明日の山行きを取りやめにしたという

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