臨死体験

臨死体験的なものをした話。

元々胃痛持ちで、十二指腸潰瘍を患った時に普段の胃痛だと思って我慢し過ぎてこじらせて、ぽっかり穴が空いてそこから胃酸が漏れてたとかで死にかけた事がある。

気づくと黄色いでろっとした水の中に立っていた。
水の高さはへそ上くらい。普通に服は着ていて、濡れて絡みつく感じが不快だった。
割とすぐそばに陸地が見えていた。
けど地上には何にもない。

地平線。
山っぽい凹凸はあった。
逆側にも遠く岸のようなものは見えてたけど、霞んでよくわからなかった。
続く空も黄色っぽくて、重たい感じ。

ついさっきまで痛みでのたうち回ってたから、ああ、俺死んだのかなあって思った。
多分これが三途の川なのかなぁとか考えながら、どうしたらいいのかわからなくて、暫く呆然としてたと思う。
ズボンを引っ張られた。

水は濁ってて中が見えない。
何かいて、履いてるズボンの裾を引っ張ってくる。
そこで唐突に、この水の中にいると地獄に落ちる!って思った。
慌てて岸に上がろうとしたけど、濡れた服が重いし、相変わらずズボンを引っ張るやつがいて、なかなか思う様に進めない。

それでも岸は近かったから、すぐ浅瀬になって後ちょっとで完全に陸地ってとこまで来た。

引っ張る力は大して強くないけど、ずっと引っ張ってくる。
さっきまで下を見る余裕がなかったんだが、ほぼ岸辺に辿り着いてほっとして、引っ張ってる奴を見たんだ。

何年も前に亡くなったじいちゃんだった。

じいちゃんは目を見開いて俺をガン見した状態で、水の中で仰向けで片腕だけ伸ばして、俺のズボンの裾を引っ張っていた。
なんか薄っぺらくて、作り物みたいに見えたけど、間違いなくじいちゃんだった。

俺はそこで固まってしまった。
けど、ほとんど陸地に上がってる状態だったから、じいちゃんの手が一瞬水から出たんだ。
そしたらじいちゃんの手がふいっと離れた。
そしてそのまま、じいちゃんはあっという間に沖の方に流れて沈んで見えなくなった。

じいちゃんが見えなくなって、俺は岸辺に駆け上がった。
そしたら耳元で、「気ぃつけや」って声が聞こえた。

次の瞬間目が覚めた。

我慢しすぎて職場でぶっ倒れ、そのまま救急車で運ばれ緊急手術まで受けて、4日意識が無かったそうだ。
血圧が異常に下がって、本当にいつ死んでもおかしくない状態だったと聞いた。
母にものすごく泣かれた。

その後は何とか後遺症無く完治して今に至る。
ただ、気になっているのは、あの水の中にいたじいちゃんは地獄に落ちたのか?
引っ張っていたのは俺を連れて行きたかったのか?

俺は、引きずり込もうとしたわけではなく、ここは危ないんだって教えてくれたんだと信じてる。
あの「気ぃつけや」って言葉からも。

でも、あの声は、じいちゃんじゃなかった。

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