異臭

尾根を歩いていると、異臭がした。
車ほどもある黒い物体が野ざらしになっている。
しかもかすかに呼吸しているようだ。

彼は不用意にも近づいて、確認した。
腐敗した動物らしきものに、蝿と蛆がびっしりひしめき、それがうごめく事で、息をしているかのように見えた。

彼は反吐を吐き、その場を後にした。

翌日下山する時、そこには肉汁にまみれた地面しか残されていなかった。
肉汁にまみれた大きな足跡が、藪の中に続いているのを見たとき、さすがの彼もそれ以上詮索する気は失せたという。

山にまつわる怖い話9

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