ヤクツク

先日夜道を歩いていると、前から小刻みに震えながらこっちに歩いてくる人がいたんだ。
普段からあまり人通りの無い道だし灯りもほとんどない所だから少し警戒しながら通り過ぎようと思ったのね。

相手の事なるべく見ないようにしてたんだけど、なんか首がおかしいんだよ。
ヘコヘコヘコヘコ会釈してるっていうかさ、相変わらず体も震えてるし凄い気味が悪かった。
その時音楽聴きながら歩いてたんだけど 、急に襲われたりしたら危ないから咄嗟に音消したのね。

そしたらブツブツブツブツ…そいつが呟いてるんだ…何言ってるかほとんど分からなかったから聞こえてきた単語だけ抜粋すると

ちこ…え…ゃ…うれ…うれ…やく…
ごじ…つく…もうすぐ…うれて…つく…

そんな感じでずっと呟いてた。
もう怖くなって走って通りすぎ過ぎようと思った瞬間そいつが

ヤクツクヤクツクヤクツクヤクツク
ヤクツクヤクツクヤクツクヤクツク
ヤクツクヤクツクヤクツクヤクツク
ヤクツクヤクツクヤクツクヤクツク
ヤクツクヤクツクヤクツクヤクツク

って叫びながら走り去って行った…
冬なのに汗びっしょりになって腰が抜けそうだった。
そいつの残り香って言うのかな?なんか臭うんだよね、腐ったような、ちょっと湿った生乾きの部屋干しのような臭いがさ…

また遭遇したら嫌だから慌てて家に帰ったんだ。
風呂入ってビール飲んで、ほっと一息ついた所でふと思ったんだけど…あいつなんかおかしかった…

体は小刻みに震えてたし首もヘコヘコ動いてたけど軸がぶれてないって言うのかな?スーッと向かって来る感じ。
足音って言うよりズズズッ…て引きずるような音がしてた。
首の動き方もなんか変だったんだよね…
張り子の虎みたいな感じなのかな?うまく言い表せ無いんだけど機械的な、首だけが分離して会釈してるようなさ…

その日は怖くて電気消せなかった。
思い出さないように違う事考えて忘れようとしたんだけど、あの部屋干しのような臭いがいつまでも鼻にこびりついてて取れなかった…

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?289

シェアする