お守り

以前住んでいた部屋に引っ越しした時の話。

引っ越ししたばかりの賃貸マンションって一応ハウスクリーニングは済んでいるんだけど、それが何時やったものなのか分からないので、家具を入れる前に一応掃除をすることにしている。

その日、床、押し入れなどを拭き、時間は全然あったので、狭い部屋ということもあり徹底的に掃除することにした。

玄関脇には備え付けの下駄箱があった。
下駄箱といってもよくあるカラーボックスのようなもので、その裏や下に埃が溜まっていそうだったので手前に引きずり出してみた。

案の定下駄箱の下は埃が溜まっていたが、奇妙な葉書が落ちていた。
葉書は絵葉書で最近のものなのか古いものなのかは想像がつかない。
透明のビニールに包まれていてなにか油絵風で「楽園」のような風景がプリントされている。
ちょっとグロテスクな色彩だったが、それより気になったのはビニールに一緒に入っていた「お守り」のようなもの。

なぜ「お守り」と表現してしまうのかというと、薄く硬質の紙なのかプラスチックなのかわからないものに奇妙な模様が書いてあり、光に透かすと更に人のようなものが見えたから。

どちらも見たことも無いようなものだったので「前に住んでいた人の郵便物か何かが下に落ちていた」ということ以外特に想像もせず、ゴミ袋に入れた。

引っ越ししてからは仕事が忙しくなり、開けていない段ボールをいくつか残したまま生活していた。

暇を見つけては棚などに荷物を収納していた際、台所の収納棚が動くことに気付いた。
普通キッチンまわりのシステムは壁にぴったり同化していると思うが、そのキッチンは家具のようにずるずると動く。
動くといってもパイプなどは動かないので十数センチズレるだけだ。

「ハリボテみたいだなあ」と思いつつもズレたところに埃が出てきたので拭き取ろうとした時、体が固まった。

またあの「お守り」が出てきたのだ。

背筋が凍った。下駄箱の下のものを見つけた時は過って落としたものだと思っていたが、全く同じものがキッチンの下にも在る。

明らかに意図的に差し込んだものじゃないのか?

そう思うと気味が悪く、その夜、部屋の至る所を探してみた。
結局その日は他に見つけることは出来なかったが、数日後、NTTの工事に来た人が壁の電話線を入れる空間の中に3つ目の「お守り」を見つけた時、全身に鳥肌が走った。

未だにそれが何なのかわかりません。

不可解な体験、謎な話~enigma~2

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