山の女神様

山の神様の話題

若い、まだ10代半ばの少年の猟師が、先輩の壮年の猟師と山に入ったが、先輩猟師とはぐれてしまった。
日が落ちてから行動するのは死につながると常々教わっていたため、たき火をおこし、弁当に持ってきた酒の筒と餅の包みを引っ張り出し、魔物よけに剣鉈を引き寄せて夜明かしに入った。

火が小さくなって、ふと目を覚ます。薪をくべたして、また眠ろうとしたところ、闇の向こうに、緑色の炎がいくつも瞬いている。
山犬か、山猫か。がくがくと若い猟師はとっさに剣鉈をつかむと、鞘を払った。
と、光の当たる範囲内に、不意に、若い女が姿を現した。
獣の皮を纏った、手足の長い、長身の女で、赤い髪と、抜けるように白い肌の、美しい娘だった。

「・・・鉈を捨てるか、捨てないか?」
猟師の少年は、先達の猟師は、絶対に鉈を手放すなと言っていたのに、何故か、鞘に収めて、横に置いた。

「餅と酒を渡すか、渡さないか?」
少年は、弁当の包みと酒の竹筒を、震える手で、相手のほうに押しやった。
そこで、娘は、獣のような歯を見せて、無言で笑った。

「・・・着物を脱ぐか、脱がないか?」
少年は、がたがたと震えながら、上着を脱いだ。娘は、それをみて、同じ言葉を繰り返した。

「着物を脱ぐか、脱がないか?」
ああ、もう、俺はこで死ぬんだ・・・先達の言いつけを守らなかったからだ・・・
少年は、涙を浮かべて震えながら、下履きを脱ぎ、下着まで脱いだ。

すると、女は、猟師の少年のそばまで来ると、いきなり、覆い被さった。
首筋を噛みちぎられると思って身を固くしたが、全く別のことをされる。
性器を触られ、口を吸われる。自分を取り囲む緑色の眼のなか、娘は、獣のような激しさで、繰り返し、繰り返し、猟師の少年を抱いた。

気がつくと、少年は全裸で眠っていた。
たき火は消えていたが、東の空は明るんでいた。
夢でも見たのかと思ったが、身体に草の汁のような物が沢山ついていて、花の香りがした。
餅と竹筒と鉈が無くなっていて、代わりに、山菜や果物や高価な茸、それに山女が、フキの葉にたっぷりと盛られて、近くに置いてあった。

ほどなく先輩の猟師と合流出来た少年は、一部始終を報告すると、

「お前、山の神様か、そのお使いに気に入られたんだな。」
「このごろ山に入る男も減ったし、若いのはほとんどいなくなっちまったからなぁ。」
「ま、果報なことだ。ケモノ(化物)に襲われたんじゃなくてよかったなあ」

そこで、不意に真面目な顔になって、

「山の神様は嫉妬深い。これから山の中では、女の話はするなよ」
「夏には素裸で水浴びをしろ」「立ち小便の時は、必ず山頂に身体を向けてな」

猟の成果は驚くほどで、「ご相伴だ」と先輩はご機嫌だったそうだ。

めでたし?

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