ウサギの魂

ウサギを追いに行ったときの話。

ウサギ猟は猟犬の質が問われる。
ノウサギを追うときに、人のほうへ人のほうへ廻してこれる犬ほど良い。
ノウサギは自分の縄張りを一杯一杯に大きく回って逃げようとする。
犬はその500~600m後を匂いを頼りに追いかける。

昼からはじめたウサギ追いは夜半に突入し、長期戦の様子。
犬は何度も父の辺りにウサギを追っているはずだが、一向に銃声が聞こえない。
そろそろ犬を回収しないと夜を徹することになりそう。
向かいの山に父がいる。私は尾根を下りて回収に向かった。
暫く下りたところで、犬の追い鳴きが聞こえた。

まだ追ってるのか・・・
予測しながら、ウサギが通りそうな地点まで先回りする。
犬はウサギの通ったとおりに走るので、回収するにしてもそのほうが効率がいい。
銃をまだ持たない私は、あわよくばウサギに一発かませられるかも、と期待しながら勢子棒を握り、息を殺した。

暫くして、犬の声が近づいてきた。
そろそろ、ウサギの音が聞こえるはず。
ウサギはトッ、パッサッ、トッ、パッサッと独特の足音を出す。
案の定、聞こえてきた・・・微動だにせず、息を殺して目をやる。

あれ?

目をやると、音のしているところにウサギはいない。
代わりにへんなひらひらした紙幣みたいなものが動いている。
大きさにして、4~5センチくらい、すべるように、ひらっと舞うように移動する。
そして音はまさにそこから聞こえる。
見る間に、それは捩れるように消えた。

???
その場所に、暫く遅れて犬が来た。犬も紙幣が消えた辺りで何度もぐるぐる回る。
犬を回収して、無線で連絡した。

帰り道、その話をすると
「ふーん、それでのう、そんならなんぼ待っても捕れんわい。ここはこないだ獲ったけェ、おらんかのと思うたんじゃが、犬がつけるけェ、入れてみたんじゃ。あんなあ、まだ走りよるんじゃのう。」

要するに、それはウサギの魂で、まだ死んだ事に気がついてないで走って逃げ続けている、というのが父の答えのようだった。
特に不思議がるでも、疑うでもなかった。

それ以後、その場所でもどこでも、そのようなものを見ない。

山にまつわる怖い話26

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