売り場の前を通りかかったときに声がしたとか、夢で見たとか言う理由で宝くじを買う奴がいるがとんでもないことだ。
田舎の地味な売り場で過去に大きな当選もない場所だったんだが、通りがかったときに何かドキドキする。
気のせいだと思ったんだが、その後何回か通りがかるたびに同じ感覚がある。
ある時通りがかると、ついに声がした。
買え、買えって。
そのうち家にいるときなどにも声がし出した。当たる、当たる。
家でも職場でも声がするもんだから気になってしかたがない。
カミさんに話したらバカなことを言うなと言われた。
ところが試しにカミさんを連れて売り場に行ってみると、カミさんもドキドキするといい出した。
その晩カミさんは夢で声を聞いたそうだ。当たる、当たる。買え、買え。
で、二人で相談して少しだけ買うことにした。
キャッシュコーナーで1万円下ろそうとしたら声がした。
もっと買え、もっと買え。
俺たちは顔を見合わせた。
この貯金は新婚旅行もいけなかった俺たち夫婦が二人で海外旅行にいこうと貯めていたお金だ。
結局、思い切って5万円だけ買うことにして下ろそうとすると、全部いけ、全部いけ。と声がした。
俺たちは興奮した。
それは不思議な声だったがその頃にはもう俺たち夫婦は完全にその声を信用していた。
50万。全額つぎ込んだ。さすがに買うときは手が震えた。
売り場のおばちゃんもビックリした顔をしていた。
その日からピタッと声は止んだ。
俺たち夫婦は抽選日まで3億円の使い道を考えて過ごした。
憧れの世界一周旅行。郊外の一戸建て。
カミさんは子供を欲しがった。
経済的に余裕の無い俺たち夫婦は子供を作る決心もできずにいたのだが、年齢的にそろそろ厳しくなりそうだったのでこれがチャンスだと夢を膨らませた。
発表の翌日。売り場に宝くじの束を持ち込んでチェックしてもらった。
おばちゃんの顔も緊張していた。
結果。みごとに外れ。高額当選は無かった。
耳元であの声がした。ちきしょう、この次は当てようぜ。
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?242