俺がまだチビの頃
田舎のじいちゃんと山の畑にもろこしを取りに行った時の話なんだが、その日はいい天気でえらく暑かった。
俺とじいちゃんはその日の晩に食べる為のもろこしを取りにいったんだ。
しばらくは俺ももろこし取りが楽しくてやっていたが5~6本も取ると、すでに飽きていた。
じいちゃんは そんな俺を怒るでも無しに、家族の分と 近所に配る分をせっせと俺の相手をしながら取っていた。
俺はと言うと 畑の近くを流れてる小川で 蛙だのザリガニだのを取って遊んでいた。
しばらくすると 小川の水面に ポツン ポツンと波紋が広がった。
その波紋はあっという間に数を増す 雨だ。
さっきまであんなに晴れていたのに、顔を上げると昼間とは思えないほど暗くなっていた。
じいちゃんが こりゃーいかん雨宿りするぞ~っと言って、農具などがおいてある小屋に駆け込んだ。
俺もじいちゃんの後を追いかけて 小屋に駆け込む。
雨の勢いは増すばかりでしばらくは外に出れそうも無かった。
じいちゃんは こりゃ~しばらく動けんな…ってい言いながら小屋の入り口を ガタガタと閉めてランプに火をつけた。
聞こえてくるのは じいちゃんと俺の話し声とザーーと言う雨音だけだったが、しばらくすると
ドンドンドン もしー ドンドンドン もしー
小屋の入り口を叩く音がした。
俺は何の気なしに じいちゃん誰かきたよって立ち上がって出ようとした時、じいちゃんがちょっと待ってろって言って俺を座らせ入り口の方に歩いていった。
入り口の隙間から外を窺ってるじいちゃんが手振りで、しー チョイチョイと俺を呼んだ。
ドンドンドン もしー ドンドンドン もしー
相変わらず入り口を叩いているが、俺とじいちゃんは 入り口を開けるでもなく、隙間から外を覗き込んだ。
入り口の外に坊さんみたいなのが立っている。
えらく薄汚れているが確かに坊さんに見える。
顔は笠のような物を被っていて見えない。
じいちゃんは俺の手を取り元いた場所に戻り こう言った。
山には人でも動物でもない物が居る時がある。
滅多に人の前には出てこないがな。
じいちゃんが子供の頃なら、雨が降っていて入り口に坊さんが立ってたら 入れてやる家も多かったかもしれないが、今じゃ逆に怪しい。
あんなもんに出くわしたら 絶対に入れちゃ駄目だって、開けて入れてやらなければ 勝手に入っては来れないからって。
そんな話を聞いてるうちに 雨も小降りになってきて、入り口を叩いていた物も 居なくなった。
山にまつわる怖い話28