よくある「山道の入り口まで追いかけてくる系」だが、親父は金盥に追いかけられたらしい。ドリフで上から落ちてくるような。
山登りが終わってくだりの道を歩いてる途中、連れの一人が後ろを振り返る。
「何?」
「いや、なんでもない」
また少し歩いて、振り向く。
一緒に振り向くと、今来た道に何かぽつんとある。
二人とも目がいいほうではないからよく見えない。
「なんだろう?」
「さあ?」
気にせず歩く。
またしばらく歩くと友人が振り向く。
一緒に振り向くと、来た道にぽつんと金の盥が伏せてある。
ここで、ちょっとおかしくね?と思い始める。
さっき来た道になぜ物が落ちてる?
さっき遠くて見えなかったものが、さっきより遠ざかったはずの今は見える?
っつーかなぜ金盥?
目を離してちょっと考えたあとに、また振り返ると、さっきより近くに寄ってきているような……?
なんかよく分からんがものすごい早歩きで帰ったそうだ。
私はこの話を聞いたとき、音も無く山道を移動する洗面器を想像して笑った。
山にまつわる怖い話28