一人暮らしを始めた頃、母親が“方角が良いのがそこだから”って言ってビリケンさんに似た人形を冷蔵庫の上に置いていったんだよ。
ちょっとキモかったんだけど、せっかくだから置くことにした。
異変はその日の夜からあった。
その人形、動いてるんだよ。
顔を南向きに置いてあったはずなのに、気が付くと東向きに回ってるんだ。
ビビりな俺はそっこー友達を呼んで事情を説明した。
冷静沈着な友達は即座に俺のビビりを鎮めてくれた。
「冷蔵庫の開閉んときの振動で回ってるんじゃね?」
そーだった。
少しずつだがバフバフすると人形が緩く揺れてた。
安心した俺はそれっきりその人形のことが気にならなくなり、数年後、就職して引っ越ししてもそいつを持って行き、冷蔵庫の上に置いていた。
卒業以来、会ってなかった件の友達が大量の缶ビールを持参して遊びに来た時、飲み始めて暫くしてから「ずっと見てたんだけどさ」って前置きしてから言ったんだ。
「かなり冷蔵庫の開閉したけど、この人形回らなくなったね。」
ビビりな俺にイヤなこと言うなよ!
じわじわ来る怖い話1