猿に似た獣

爺さんから聞いた話。

爺さんの友人に猟師がいた。そのころはまだ単発の猟銃だったそうです。
冬場、仲間の猟師と山には入り、何日か山小屋に泊まり込みで猟をしていた時のことです。
山中で猿に似た獣を撃ったそうです。
それは猿より大きく、やせた熊に見えたそうです。

一発でしとめることはできず、逃げ出したのでつれていた犬が後を追いかけました。
が、犬は帰ってきません。鳴き声や遠吠えも聞こえず、獲物の居場所もわからなかった。
仕方なく猟師たちは捜索を打ち切り、拠点の山小屋に戻ったそうです。

夜中、まんじりともせずにいると、小屋の外で物音がする。
犬が帰ってきたのかと思い、小屋入口のつっかえ棒を開けようとしました。

が、仲間の猟師がそれを止めた。こういう場合は様子を見なければならないそうです。
しばらく様子を見ていると、外の何者かは小屋の周りをぐるぐる回っている。
それは次第に壁をひっかいたり、入り口を触ったりしている。

息を殺して成り行きを見ていると、仲間の猟師がいきなり飛び上がった。
見ると仲間が寄りかかっていた壁板の隙間から毛むくじゃらの指が出ている。

その指はすぐに引っ込んでしまったが、人の物によく似ており、はるかに長かったそうです。
仲間の猟師はそのまま昏倒してしまいました。
猟師は猟銃を構えたまま朝を迎え、夜明けと同時に里に駆け下りたそうです。
猟師は半狂乱で騒ぎまくり、ちょっとした事件のような扱いになったそうです。
小屋に残された仲間は、爺さん他数人で救出に向かったそうです。

救出された仲間の猟師は、手足が震え、喋ることも困難な後遺症が残ったそうです。
友人の猟師は、猟師の長老的存在の人のところに行き、その日のうちに猟師をやめたそうです。

長老の話では、例の猿に似た獣を撃ってしまったことによる祟りとのことでした。
この話を聞いたのは爺さんと山菜採りのため山の中には入り、例の山小屋の残骸を見た時でした。
爺さんが猟師を助けに来たとき以降、山小屋は使われなくなったそうです。

山にまつわる怖い話30

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