私は雑誌関係のライターをやっているものです。
なんとか食えてるという程度で、売れっ子というわけでもありません。
オカルト関係の仕事をやっていると、自分自身が奇妙な体験をすることもあります。
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東京のある大学病院に取材へ行った時のことです。
この仕事自体はオカルトとは関係なく、健康雑誌の仕事でした。
協力者の医師とは、小会議室で13:30からインタビューし14:30に終了。
医師と軽く雑談し、15:00に小会議室を出ました。
この大学病院は、山の斜面というか坂の途中に建っていて、旧館と新館に分かれています。
少々、判りにくくて、坂の途中にあるので、階数が入れ違っているような感じです。
でも、まあ、来る時はすんなりと来られたのだから、帰る時もそんなに困りはしないだろう、と‥‥
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どれぐらい歩いたでしょう。
いつまで経っても出口に辿り着きません。車は旧館の駐車場に置いていたので、なんとか旧館の正面玄関に出たいのですが、どういうわけか行き着かないのです。
ふと、時計を見ると、既に40分が経過していました。
おかしい、いくらなんでも、40分も歩き回るのはおかしい‥‥
歩きながら考えていると、背後に気配がしました。
若い看護婦さんです。空の車椅子を押しながら角を曲がっていきます。
もう、こうなったら、新館でもなんでもいい。とにかく外に出よう。外にさえ出ればどうにかなる‥‥
そう思いながら、また、歩き始めました。
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異変に気付いたのは、17:00を過ぎてからです。
なぜか、誰にも会わないということです。
平日の昼間とはいえ、ここは大病院です。救急外来もあれば入院施設もあります。
なのに、私はさっきから、ほとんど誰とも会っていない。
そういえば、何人かの看護婦とすれ違ったような‥‥
いや、違うぞ? すれ違ってはいない、後ろを通っただけだ。
何人か? いや、違う、違うぞ。あの看護婦は同一人物だ。
その証拠に、看護婦はいつも若く、毎回、空の車椅子を押している‥‥!
次の瞬間、私はゾッとしました。
後ろに車椅子の気配を感じたからです。
恐る恐る振り向くと、私の真後ろ1メートルほどに空の車椅子を押す若い看護婦が‥‥
そのまま、私に向かってきたのです。
まったく無表情で、私を視界に入れずに!
ぶつかる! と思った次の瞬間、看護婦と車椅子は私をすり抜けて、角を曲がっていきました‥‥
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私は驚いて廊下を走りました。今までの順路とは逆の方向に、とにかく走りました。
いつの間にか、私は取材場所だった小会議室の前に着きました。
ホッとした私は、小会議室のそばの非常階段で煙草を一服しました。
それから、歩き始めると、スッと出口に到着したのです。その時の時間は17:56でした。
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なんとも言えぬ、奇妙な体験でした。
その日の夜、家に帰ると出版社から仕事の依頼と資料が届いていました。
その中に、ある女性漫画家の体験談がありました。
京都の山で、タクシーに乗っていたら、何度も何度も同じところをぐるぐる回って、いつまでも目的地に到着しない。
しかし、煙草を一服したら、その迷宮から脱出できた、という‥‥
また、その資料の中には、自分は煙草をすわないが、やばい雰囲気の時のために煙草を持ち歩いている、というのも。
煙草には、なにか特殊な力でもあるのでしょうかね。
ほんのりと怖い話7