小学生の頃の話。
大雪の降った翌日の朝、友達数人と雪遊びをしに行ったんだ。
場所は近くの山にある廃寺みたいなところなんだけど、開けた平地で、新雪が一面に積もってた。
しばらく雪合戦とかして遊んでたんだけど、小便したくなって、ひとり離脱。
んで用を足して帰ってくると、友人たちがいない。
からかわれてるのかな、と思って名前を呼びながら広場に走ると、急に穴に落ちた。
一瞬なにが起きたか解からなかったけど、落とし穴に嵌められたんだな、と思った。
穴は狭いけど結構深くて、背丈の倍くらいある。
こんな穴、小便してる短期間の間に子どもが作れるとは思えないんだけど、当時はそこまで頭が回らなかった。
「おーい、おまえらふざけんなよー」
俺は笑いながら友人たちの名前を呼ぶんだけど、返事がない。
だんだん心細くなってきて、泣き出しそうになったとき、ひょいと顔を突き出す姿が見えた。
それが、なんといったらいいか、5~6才くらいの子どもの影。
逆光があたってるみたいに、像がぼやけてる感じなんだけど、顔だけは妙にハッキリ見える。
顔なんだが、満面の笑みを浮かべてるんだけど・・・その、目が、無い。
のっぺらぼうみたいにつるりとしてるんじゃなくて、目のところが空洞なんだな。
なんだろう、と思ってると、それが一人増え二人増え、いつしか穴の周囲を取り囲むように、皆、眼球の無い目でこっちを覗き込んでる。すごく楽しそうに。
何故か、恐い、とは思わなかった。
そのかわり、なんだかすごく哀しくなった。
大声で泣き声をあげた瞬間、目の前が真っ赤になって、急に夕方になった。
ぼーっとしてると、向こうから友達と、大人が何人か駆け寄ってきた。
「お前今までどこにいってたんだ!」
友人の話によると、どうやら俺は、小便をしにいくといって消えてしまったらしい。
雪も積もっているし崖にでも落ちたかという話になって、あわや警察沙汰になるところだったそうだ。
俺が立ってたのは元々いた平地の真ん中で、穴なんてどこにもなかった。
かといって俺が寝てたような跡もなく、其処にずっと立ってたようにしか思えなかった。
(もちろん、だったら友人たちが気づくはずなんだが)
後になって調べても、特別に因縁のある場所かどうかは解からなかった。
神隠しみたいな話は地域にいくつかあったけど、そんなのは何処にでもあるだろうし、結局なんだったのやら。
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