訪ねてきた女の子

ちょうど今ぐらい、8月の出来事だったので書くことにする。

俺が学生の頃に住んでたのは東側と北側に道路がある十字路の角地で、南向きに建っているアパートだった。
二階建の8世帯あるアパートで東の道路側、一階の端の部屋に住んでいた。
周りは民家よりも畑が多く、数年前から建売がぽつぽつ立ち始めたような郊外だ。

ある夜、しょっちゅう俺の家に来る友人とふたりで、いつものように飲んでたら「ピンポーン」とインターホン。
まだ10時ぐらいだったので、他の奴が遊びに来たのかと思って確かめもせずにドアを開けた。そしたら、3歳くらいの女の子が立ってる。

こんな時間に子供が何だろう、とりあえず「どうしたの?」と聞くと泣いていて、何を言ってるのか分からない。
そしたら奥から友人も来て、ふたりで子供の名前を聞いた。
「…○○ ○み」「○みちゃんって言うの? いくつ? おうちはどこ?」
子供が苦手な俺に代わって、友人があれこれとやさしく聞いてくれた。

しかし、子供相手じゃ要領を得ず、ふたりで「どうする?」「警察に電話する?」そんな感じで玄関先で数分やってたら、急にその子が十字路の方へ走って行った。
あれ?っと思って見ると、十字路の所にお母さんらしき人がいた。
女の子と手をつなぐとお母さんはこちらを振り向きながら頭を下げて行ってしまった。

俺は友人と、こんな時間に変なの、とか人騒がせだよな、とか言い合って飲みの続きを開始した。
しばらくすると友人が、
「あれ?、さっきの変じゃね?」「何が?」
「あの親の顔見えた?」「あんまり…。でもそこの(十字路)外灯って結構明るいよな。」

普通だったら服装とか顔立ちとか、俺の部屋の玄関からならはっきりと分かるはず。
北に玄関があって駐車場、その角の十字路の外灯だから、玄関先からあの十字路まで10メートルもない。なのに俺と友人の記憶では、あのお母さんは黒いフィルターがかかったようなぼんやりした印象で、顔はおろか服装すら分からなかった。

そしたらまた友人が、
「おまえんちのインターホン、あの子の身長で届くか?」
「こんなに暑いのに、やけに厚手の長袖の服着てなかった?」

ここでふたりしてガクブル…。
俺の借りてた部屋のインターホンは、普通よりもなぜか高い位置に付いてた。
長身の友人が、かがまなくて(・∀・)イイ!!と言っていた位置だ。しかも季節は夏。

何日かして夕方帰宅した時に、郵便受けに広報を入れに来たアパートの大家のじっちゃんに会った。
あの日のことが気にかかって、じっちゃんに
「この辺に○○さんっていうお宅ってありますか?」
と聞いてみた。

そしたら、
「この辺に、そんな人はおらんと思うよ。…あ、7,8年くらい前に、そこに家があって、そこの人が○○さんだったよ。借金か何かで一家心中して、5,6年前に取り壊したんだよ。小さい子がいたのにかわいそうだった。」
と言う。

そして大家のじっちゃんが指さしたところがあの十字路の角。
俺の住むアパートとちょうど斜めの位置になる草の茂った空き地だった。

このことを友人に伝えると、地元出身の奴にも聞いてみようって言うんで、違う学部の地元の奴に聞いたら、俺のアパートのあたりで一家心中があったのを憶えていた。

もしかして地元で有名な話かよ、おいおい、って友人と市の図書館で新聞を調べたら(俺らも暇だったんだな)マジで記事があったーーーーーー!!!!!
しかも、女の子の苗字も名前も一致ーーーー!!!!!

……あの日俺んちに来たのはなぜ?? どうして夜中でもない時間に?
今となっては忘れられない学生時代の思い出だが、あの日以来、何があっても借金の保証人にはならないと誓った。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 39

シェアする