崩れたユニットバス

ある日のユニットバス施工仕事の話。

うちの会社が施工したマンションのユニットバスが、天井から水漏れすると言う苦情を受けて直しに入った時、苦情を入れた住民の方側のユニットバスを見ると、確かに天上が水漏れで蓋が黒ずんでいた。
直ぐに蓋を外すと配水管とコンクリートの微妙な隙間から水が漏れてきている事が解った。

マンションは全て、全階水周りは同じ配置にされているから上の階のユニットバスに何か問題があるのだと思い、上の住民に説明してバスに入らせてもらった。
家主が少し汚れていますけれどと断りを入れるので、ああ、掃除不足なのかと思って入ってみると、施工から一年も経っていないのにそこら中が水黴に侵食を受けていた。
かったシリコン材が黴に食われて真っ黒に変色していた。

こんなになっていても家主は気にならないのかと、よっぽど不清潔なのかと思うと、汚いのは風呂場だけで他の部屋はは小ざっぱりとしているし、家主も人がよさそうな小奇麗な40代風の女性でそんな風には見えなかった。

気味が悪かったが仕事なのだからと諦めて排水部を確認してみると、一体型の床部分、強化プラスチックに亀裂が入ってしまっている事が解った。
そんなに簡単に亀裂が入るわけがないと目を疑ったけれど当然現実。
バスは床部分をあわせ、全取替えになってしまった。

後日、ユニットバスを解体してバス一体型の床部を持ち上げると、コンクリートとの間にグズグズに崩れかけた出来損ないの人形みたいなものが落ちていた。

会社の先輩と自分二人で来たんだが、二人ともそれを見て顔面蒼白。
それは髪の毛の束を無理やり包帯で包んで人型にした様な物だった。
茶色のゼリー状のにごごりの様な物体がこびり付いた人形の体中心部分には、錆びた裁縫針が山ほど刺さっていた。

正直触りたくもないと思ったけれど十中八九原因はコレなんじゃないかと思い、ここで躊躇したら又ここに来なければならないと思い至る。
仕方がないのでゴム手で引っつかんでポリ袋に入れて帰社途中、適当なゴミ置き場に放置してきた。

家主はそれの存在を知ってか知らずかその後の素振りも全く普通、こちらにはそういった話はしてこなかったし、自分達も余り触れたくなかったのでそのまま施工を終えて帰ってしまった。

しかし、原因を作ったのがあの家主でまたユニットバスが壊れたとしたらどうしようかと今でも少し落ち着かない。
今のところ何もクレームがないので大丈夫だと思うんだが・・・

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