山小屋の訪問者

山を長年登っていると、多くの人たちに出会うが、一風かわったひとたちに出会うこともある。
私は夏山が好きで、夏にまとめて有給休暇をとって山小屋などを利用しながら一週間ほど泊まるのが恒例行事となっていた。
その年も7合目にある山小屋に長期泊まることにして登山を始めた。

その山小屋はかなり大きく、林間学校などにもよく利用されるような立派なものだった。
さすがに、かなり老朽化してはいたが設備は問題なく使用できるはずだった。

早朝から登り始めお昼過ぎには山小屋につく予定だった。
天気はよく、順調に登山は進んでいったが、途中で10人ほどのグループと出くわした。

そのグループは大人2人で小学生の男女8人ほどであった。
夏休みなので、山ではよくある光景だが、雰囲気がおかしかったので強く印象に残った。
そのグループは異常に軽装だったので、まるで近所に散歩でも行くような格好だった。

2、3合目なら遠足できた小学生達がハイキングのような事をしていることはあるがここは6合目、大人でも厳しい場所だ。しかもグループには活気がなくどんよりとした雰囲気がさった。
俺は、そのグループを追い越し、山小屋へと急いだ。

山小屋に着くと、少しほっとしたが、さすがに古びてて悪い意味でいい雰囲気を出していた。
このような無人の山小屋は一ヶ月ほど使われなくなると、もう山のものになってしまう。
いろんな生き物が入っていた痕跡や、虫、落ち葉などが入り込んでいる。

野宿するよりはましだなと思い、設備のチェックをし始めた。ほとんどの設備は使える状態だったのでひとまず安堵した。
そこで夕飯はそとで焚き火を炊きながら飯ごうでご飯を炊き、簡単な男料理をすませた。

日はもう落ち始め、夕闇が広がりだし、きれいな星空が一面を覆った。
いい夜だな、と思いながら、明日の朝早くから釣りをする計画があったので、8時には寝袋で寝始めた。そこは2階の奥の部屋で、夜空がきれいに見えた。

少しうとうとしだすと物音が聞こえてきた。
ドアをあける音。。。そして何人かが山小屋に入って来る音だった。。。

時計を見ると夜10時。
こんな時間に。。入ってくるのはどんな連中だ?トラブルでもあったんか。と思いながら音に耳を済ませた。どうやら一回を歩き回ってるようだった。
不思議な事に、会話は聞こえずただただ足音と、扉を開け閉めする音だけが聞こえてきた。

少し不気味に感じたが、疲れもあってうとうと寝てしまった。
俺は、はっと目がさめた。ギシッ。。ギシッ。。。。ギシッ。。足音だ。
その足音は階段を上ってる音のようだった。しかも1人ではなく数人いるのがわかる。

俺は冷や汗をかき始めた。半径10キロは俺しかいないはずの山奥の山小屋で、見ず知らずの人間たちが近づいてきてる。。。。
まあただの登山者だろうから、この部屋を開けてきたら一言あいさつしておけば問題ないだろう。。」
俺は自分に言い聞かせた。

そして、その足音はさっきと同じように2階をうろうろし始めた。
何かを探してるのか?寝る場所でもさがしてるのだろうか?
だがやはり、何も声は聞こえない、無言で何かをやっている。不気味だ。。。
すると足音が近づいてきた、俺の部屋の前にきたようだ、勇気を振り絞って話しかけた。

「どうも。。この山小屋で泊まってるものです。。よろしく。」
すると足音が一斉に止まった。
少し立つとまた足音が聞こえ出した、なんと俺の部屋の前に集まってきている。

(こいつらは、何が目的なんだ。。。気持ち悪りい)
「なんのようだ?」俺はすこし語気を強めて言った。
何の返答もない、なんの動きもない。
さすがに幽霊なんてのは信じない俺でも得体の知れない恐怖を感じ始めた。

その状態で10分が経過した、おれは寝袋からでて有事のときに備えていたが。。
何も動きはない。俺は扉に近づいていった、相手の何か音が聞こえるかと耳を澄ました。。
すると、かすかに聞こえる。。何かをささやいてる。何を言ってるのかはわからないが確かに話してる。

数分後、やつらは動き始めた、ギシッ。。。ギシッ。。。ギシッ。ギシッ
俺の部屋の前から離れていってるようだった。
そして階段を降りていくのも分かった。耳を済ませていると山小屋から出て行く様子もわかった。

俺は部屋の窓から、外を見て愕然とした、そこにみえたのは子供のようなシルエット。。
暗いのではっきりはみえないが、全員が大人の身長の半分くらいだった。
そいつらは夜の山へ消えていった。

俺は一晩中寝ずに朝を待っていた。寝たらまた奴らが来る気がしたからだ。
もちろんこんな山小屋で数日泊まる計画は完全に捨て去り。
俺は、日の出と共に下山した。このこと以来、無人の山小屋で泊まるのをやめた。

山にまつわる怖い話36

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